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【R18 食戟のソーマ】大好きなのに素直になれない。

第1章 プライドの高い先輩はいつも私を『のろま』という。


「それだけなら、帰っても構いませんか?今からまた授業がありますし…」
「あぁ、すまないな。優秀で真面目な君が授業に出ないのはまずいだろう…行っていいよ」
「失礼致します」

ドアを開けて出て行くと、後ろを振り返り軽く頭を下げてドアを閉める。私今どんな顔しているだろう…笑顔で笑えるだろうか。これからまた日向子に会う。彼女は遠月十傑に必ず入るであろう天才の中に入る部類の人間でもある。

コックコートの上着を脱ぎ捨てて手を持つと、長い廊下を歩いている脚を止めてズルズルとしゃがみ込んだ。

「っ…授業、サボろうかな…」

両腕をクロスさせてまるまる。視界が歪み、床や制服にぽたぽたと雫を落とした。あぁ…そうか、泣いているのか。私は。

「っふ…く、はぁっ…」

下唇を噛んで声を出すのを我慢した。誰にも見られないように、いつも笑顔でいる優等生でいなければいけないからとひっそり泣いた。

+++

「四宮小次郎、+A評価」
「ありがとうございます」

頭を下げる四宮は当たり前だというような表情で調理器具を洗い始めた。次の授業まで暇であったため軽く廊下を散歩する、そして百合子を見付けたのだ。艶やかな黒髪を一つにまとめて、コックコートを脱ぎ捨てると彼女は床に座り込む小さな後ろ姿を。

「おぃ、藤崎…」

なにかあったのか心配で小声で声を掛けようとすれば、声を押し殺して泣いている百合子がいた。嗚咽で両肩が揺れていて、近付く事をためらう四宮は右手を出して、ぐっと我慢し声を掛ける事を止めた。

「なんで…泣いてんだよ」

ぽつりと小さく呟いた言葉は百合子に聞こえる訳もなく消えていく。こういう時、なんて言葉を掛ければいいのか四宮は分からなかった。この前の事もあり、彼女とは話す事も元々少なかったのに、あんな一方的なセックスでもっと気まづくなってしまったのだ。

しかし四宮にとっては、百合子の事を忘れようとも余計に気になってしまい忘れる事が出来なくなってしまった。

「っ百合子…」

彼女の名前をそっと呟く。コックコートの胸元を握り締めて愛おしそうに何度もいっていた。そしてため息をついて、ちらりと彼女の泣く後ろ姿を見つめてそっと調理場へ後にした。
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