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【R18 食戟のソーマ】大好きなのに素直になれない。

第1章 プライドの高い先輩はいつも私を『のろま』という。


上辺だけの友達は沢山いた。仲がいい友達なんて手で数える程しかいなくて…それでも楽しかったし、学校生活には充分充実していた。

私には好きな人がいた。遠月十傑評議会のメンバーではなかったが、親しみやすくて明るくていつも優しい料理を作るそんな彼が。私が目に追っていたのを四宮先輩は知っていたのだろう。私はコツコツとローファーの音を聞き廊下を歩く、ガラッと調理室へ入ると包丁を持つ四宮先輩がいて。私はゆっくりドアを閉めて問い掛ける。

「どうしてですか…?」
「一体…なんの話しだ。食激を申し込んだのはアイツの方だろう」
「だって!四宮先輩が…勝つに決まってるじゃないですかっ」

勝ったら一席を譲り、負ければ退学だなんて…余りにも無謀すぎる。片想いの彼が負ける事は目に見えていて、応援なんて素直に出来る訳がなかった。

「っ…」

下唇を強く噛んでうつむくと鼻で笑い「あんな男のどこがいいのか…」といった。カッと血の気が上り身長差のある四宮先輩に近付く。そのまま思い切りグイッと調理服を引っ張った。首が締まるのか顔を歪める四宮先輩を強く睨む。

「あ、貴方見たいな最低な男よりも!よっぽど彼の方がカッコイイわよ!」
「っ…」
「どうして邪魔するの!私のなにがいけないの!貴方の邪魔なんてしてないでしょ!?私の事を…鬱陶しいとか思うなら、私の事を切り捨てなさいよ。あの人はなにも関係ないじゃないっ…」

止められなかった自分の無力さが悔しくて、ぽたぽたと床に滴を落とす。困惑した表情で見下ろす四宮先輩の胸板をポスポスと力無く叩いた。大嫌い、私だけじゃなく…私の片想いの相手にもちょっかいを出すなんて、そんな四宮小次郎が大嫌いで仕方ない。

ズルズルと力尽きるように座り込み涙を流す私に四宮先輩は小さく息をついた。そしてカタンと包丁かは分からないなにかを置くと私の前にゆっくり膝を付いた。

「なんですか…」
「いや…あ、あれだ。のろまの顔がどれだけ無様か見たかっただけだ。全く…お前に気に入られたアイツも不運で可哀想だな」

そうは思わないか?と歪んだ笑みで私の頬を撫でた彼に、私のなにかがプツリと切れた。キレてはいけない大事ななにかが目の前にいる四宮先輩の言葉と共にガラガラと崩れ落ちた。

「四宮…先輩…私といい事しませんか?」

頬を撫でる彼の手をそっとすり寄せてうっとりと恍惚に笑った。
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