【R18 食戟のソーマ】大好きなのに素直になれない。
第1章 プライドの高い先輩はいつも私を『のろま』という。
床に尻もちをつく私にそう吐き捨てて見下ろす四宮先輩に、すみませんと小さく謝った。日向子は尻もちをついた私を心配そうに見ていて、苦笑いで「大丈夫」と笑い立ち上がった。
お礼で皿洗いをしたのに、割りそうになるなんて…四宮先輩からすれば邪魔にしかならないだろう、いつもはこんな初歩的なミスをしないのに。やはり遠月十傑評議会の一席である四宮小次郎が、そばで料理を振舞ってくれたというのが無意識に緊張していたのかも知れないと小さく息をついた。
「邪魔だ、どけ…俺がやる」
「でも…」
「また割らされたりしたら困るからな。それに俺が自分でやった方が早い」
なっ!かっ…感じ悪い。確かに貴方から見れば、凡人の私が皿洗いする時間も遅く感じるとは思いますけど。なんで初対面の相手にここまで刺のある言い方で罵られなければいけないんだろうか。
私の視線に見向きもせず黙々と調理器具を洗い始める四宮先輩に、私は邪魔にならない場所でポツンと突っ立っているだけ、そんな時助け舟を出してくれた日向子は私の手を引っ張った。
「じゃあ百合子ちゃん、後は四宮先輩が全てしてくれる見たいですから…私達は行きましょうか」
嬉しそうに私の後ろから抱き着いて来た彼女に、安堵のため息をつく。ここの調理場は息が詰まる。四宮先輩の影響だろうが、空気が重くて仕方なかった。けれどどさくさに紛れて私の胸を揉む日向子には後で頭にチョップを食らわせてやろうと思う。
「それでは四宮先輩、また今度です」
「お邪魔しました、四宮先輩」
もう会う事はきっとないと思い、精一杯の笑顔で頭を下げる。四宮先輩は睨むように私を見下ろすとなにも発する事なく私に背を向けた。あからさまな拒絶だろうか、少し寂しいなと調理場をそっと出て行く。
私は気付いていなかった。四宮小次郎は調理器具を洗う手を止めて顔全体を真っ赤に染め上げながら小さく震えていた事を…
そうこれが藤崎百合子と四宮小次郎の出会いでもあった。そして四宮小次郎は百合子に対して一目惚れで、なんとしてでも彼女に振り向いて貰いたいが為にちょっかいをかけて悪態をついてしまう。
そんなこじらせ過ぎた超不器用な四宮に、百合子は全く好きになれる訳もなく…苦手意識がどんどん募っていって。等々彼女はキレてしまったのだ。
