【R18 食戟のソーマ】大好きなのに素直になれない。
第1章 プライドの高い先輩はいつも私を『のろま』という。

ピクリと肩を浮かし、私を見上げる四宮先輩は金色の瞳が狼狽えて揺れていた。視線が泳ぎそして蚊の鳴くような、情けない声でいう。
「のろまのお前が…日向子の友達だからだろう?だ、だから…少しでも…」
口をどもらせて、モゴモゴとはっきり話さない為最後まで声が聞き取れない。徐々に頬が赤く染まって行き、私が見る視線に耐え切れなくなったのか顔をうつむかせる。
最近、四宮先輩の口から『日向子、日向子』と良く名前を聞く。嫉妬ではないが、私の事を利用して日向子に良く思われたいとかだったら…もう一度彼のプライドをへし折ってやりたい。だから…私は微笑み身体を軽く屈めると首を傾げて見た。
「四宮先輩って…好きな人、いるんですか?」
「っっ、はぁっ!?」
分かりやすい…顔真っ赤。うつむいていた顔を勢い良く上げた四宮先輩はやはり図星だったようで、ブワッと顔全体が赤くなった。やっぱり日向子の事を?まぁ…私にはどうでもいいけど。
「私には関係ないですけどね。絶賛失恋中ですし?」
「っ…わ、悪かったな…」
「大丈夫です…もういいんですよ。でも…気持ちくらいはしっかり伝えたかったなとかは思います。だから少し後悔はしていますし、大丈夫だと思っても…やっぱりまだどこかに未練があるんでしょうね?そんな女々しい自分に恥ずかしくなりますが…」
「…っ」
刺のある言い方をしてしまったからだろうか。赤くなる頬がゆっくり青白くなって行き、申し訳なさげに目を伏せた可哀想な四宮先輩に…その顔がとても可愛らしいと欲情してしまった自分に苦笑いする。
「大丈夫ですよ、本当に気にしないで下さい。えっと…それじゃあ授業に戻りますね?一度日向子ちゃんにも聞いて見たいと思います」
「あぁ…分かった、水原にもお前の事は伝えておく」
「はい、宜しくお願いします」
それでは、お先に失礼します。と軽く頭を下げて後ろを向き歩いて行く。四宮先輩がなにか言いたそうにしていたが、私は見ないふりをした。
コックコートを脱ぐ、休憩中であろう教室をガラッとドアを開ければ周りから痛い視線を感じる。そんな時日向子だけは私を見つけて泣き付いて来たのだ。
「うわーん!百合子ちゃーん!心配したんですよ!?大丈夫でしたか?先生になにか嫌な事言われませんでしたか!?」
彼女の優しさに、どうしようもなくまた泣きそうになった。
