【R18 食戟のソーマ】大好きなのに素直になれない。
第1章 プライドの高い先輩はいつも私を『のろま』という。

「だからっ…俺だけが見ている所でなら、どれだけ食ってもいいって言ってんだよ!」
「は、はぁ…ありがとうございます?」
とにかく許しが貰えた為、首を傾げながらもお礼をする私に四宮先輩は余り納得がいかないような表情で私を見てため息をついた。
「でも…四宮先輩の手料理がずっと食べれるかどうかと言えば、とても微妙な所なんですけどね…」
「あぁ?それは一体どういう事だ、この俺が振舞った手料理が食えねぇと言いたいのか?」
「いいえ。それは勿論食べたいですよ?四宮先輩の料理は本当に美味しいですし…」
でも、私が遠月茶寮料理學園を卒業出来るかどうかは分からない。日向子とずっと私と二人でタッグを組んで調理をしてくれたとしても、これからもずっと出来る訳でもないし、それに私のせいで日向子に迷惑が掛かるような真似も絶対にしたくはなかった。
「四宮先輩、愚痴なんですけどね…」
「愚痴ならよそでやれ」
「お願いします。聞いて下さい、日向子ちゃんにも言えない事なんです…四宮先輩にしか、聞いて貰えない愚痴だから」
私が日向子の名前を持ち出すと、ピクリと反応を返した彼はポトフに口を付けながらもちらりと私の方を見た。私は深呼吸をして口を開く。
「私、いつも日向子ちゃんに頼りっぱなしで…今日先生にも言われたんです。サポートとしては優秀だけれど、一人の時は発揮出来ないし…味の質も落ちるから。君は遠月十傑には入れないと言われてしまって。だけど自分でも分かっていたから…言い返せなかったのが悔しくて、情けなくて…」
得意な料理が胸を張って言えない。四宮先輩はフランス料理、日向子は日本料理。私は…なんだろう。分からないのだ。全てに置いて、作る事は好きだが…これを作る事が得意だと胸を張って言えない事がまた悔しく、どうしようもない虚しさだけが心の奥にずっしりと伸し掛るように残るのだ。
「だから…四宮先輩は憧れですけど、羨ましいとも思えるんです」
「はぁ…だったら、自分で努力するしかないだろう」
「努力ですか…」
今でも努力してますよ、寝る間も惜しんで自分の得意料理を手探りで探して…それでも変わらない場合はどうすればいいんですか。なんて言いたいが彼に言った所で変わりはしないかと「そうですね」と作り笑いで目を細め口角を上げてポトフに口を付けた。
「冷めても美味しいなんて…やっぱり四宮先輩は凄い人です」
