第9章 天からの贈り物
街に被害が出ないよう、大きく大きく硬い壁を張り、衝撃に耐えられるよう気合を入れる。
最悪鏡花ちゃんが異能を扱えなかったとしても、私がいれば彼女の命は助けられる。
後は、自分の血が持つかどうか…
『…ほら、折角貴方もパラシュートを持っているんだから、早く脱出しよう?私は移動が出来るしフランシスさんの指示ももう切れてるから、急いで脱出口に……危ないかもしれないし、私が送っていくね』
「!?……い、一瞬で…」
能力ですぐに脱出口に移動して、まだ私の元にいた男の子にパラシュートを付け、脱出口を開く。
『ほら、早く…こんなになるまでついててくれてありがとう』
微笑んで言うと、何故だか本当に苦しそうな、辛そうな表情になる男の子。
『?どうしたの、私ならほら、移動だって…』
「…自分の命を守るために人を殺すような人間は、やはり悪だと思うか」
男の子から妙な質問をされた。
自分の命を守るために…そんなの、人間の防衛反応だ。
仕方の無いことだ。
この子も私と同じようなものを抱えてきたような子なのだろうか。
ギュ、と軽く抱きしめて、大丈夫だよと声をかける。
『悪なんかじゃない。…ただ、その分貴方はちゃんと生き……て……____』
「…ごめん。本当に、ごめん」
私から離れて脱出した男の子の背中を、呆然と見つめた。
苦しそうな顔で、本人の意志とは裏腹の行動だったのだろう。
だけど、流石の私だって、こんなところまで予想なんてしないでしょ……?
『…………首、輪…ッ?嘘、これじゃあ衝撃に壁が耐えられな……っ!!』
あの男の子は、私につける首輪を隠し持っていたのだ。
フランシスさんの指示?そんなはずがない、私にこれをつけるメリットなんて今回は無かったんだもの。
なら、本人の意思?違う、それならあの子はあんな顔をしていかなかった。
そこまで口に出してから、エネルギーの供給が出来なくなった不完全な壁を見つめ、それよりも更に大変な問題に直面した。
急いでパラシュートを探そうと拠点内部でまだよく見ていなかった制御室に立ち戻る。
『う、そ……無い…っ?』
「!どうしたの…?」
『鏡花ちゃん……ごめん、なんか、何が何だか…能力、使えなくなっちゃった』
「そんな……ッ、パラシュートは!?」
『…無い。だからごめん、鏡花ちゃんは何とか自力で脱出を…____』