第9章 天からの贈り物
『!そうか、輸送ヘリ…鏡花ちゃん、その輸送ヘリ、操作できるの!?』
「出来る、やり方は教えてもらったから。この無人機を使って、街に着く前に墜落させる」
「そうか……すごいよ鏡花ちゃん、これで皆助かる」
パラシュートの準備をお願いします、と敦さんはメルヴィルさんに頼んでから、君も早く脱出するんだと鏡花ちゃんに話しかける。
しかしそれに返ってきた鏡花ちゃんの返事は、無理というものだった。
「私は虜囚。足首が鎖で繋がれているから、脱出装置のあるところまでいけない」
鏡花ちゃんの声に敦さんも他の人も顔を顰めるものの、違和感に気が付いて、私は頭を働かせた。
さっき鏡花ちゃんは、操作方法は教えてもらったと言っていた。
誰に教えてもらった?
恐らく敦さんに指示を出していた人…そして鏡花ちゃんを助けるべくして安吾さんにも掛け合っていたであろう、太宰さんだ。
四年前ならまだしも、今の太宰さんが女の子の命と街の人達を秤にかけるような事はしないはず。
そしてここで鏡花ちゃんが自力で生き残るには、私の助けか夜叉の制御が必要だ。
『……!成程、そういう事』
ポツリと呟いた声は、芥川さんにのみ届いていた。
「私の事は諦めて」
「ダメだ!!そんなのダメだ、軌道を変えるんだ!!!」
「これまで私には、一片の光もなかった。でも、今日分かった…命を犠牲にして皆を守れれば、きっと私は、入社試験に合格できる。なら、何も惜しくはない」
太宰さんがそこまで話しているのであれば、本当にこれを入社試験にするつもりなのだろう。
この様子だと、恐らく社長の異能の事は一切教えていない。
本気で彼女に命の選択をさせたんだ。
「やめるんだ!!!……っ」
目の前にはもう輸送ヘリが迫ってきていて、追突するのに一分も掛からないような状況だった。
流石にここで全員いては元も子もないため、鏡花ちゃんの事はもう振り切って、私は私の仕事をしようと後ろを振り向いた。
それと同時に芥川さんは敦さんの襟を掴んで歩いていく。
それにもがいて鏡花ちゃんを説得しようとする敦さんに近づいて、小さく耳打ちをした。
『脱出を。私は出来るだけ地上の方に危害が及ばないよう、辺りを囲みます…鏡花ちゃんは任せてください』
「!そんな、それだと蝶ちゃんもッ」
『私の能力は知っているでしょう?大丈夫、先輩に任せなさい!』