第9章 天からの贈り物
「……もう、身体が…ッ、蝶ちゃん……!?」
芥川さんに続いてその場に倒れる敦さんの横を通り抜けて、フランシスさんの元に急いで向かうと、フランシスさんは再び身体を起こして、呆然と立ち尽くしていた。
その目はおぼろげで、虚ろな眼差しを夕日に向けている。
「勝ったぞ…ゼルダ…………待っていてくれ…もう一度、君に…____」
そこで気を失ってしまったのか、強い風に身体が浮いて、甲板の外へと身を投げ出されてしまった。
手を伸ばしても、間に合わない。
間に合わないなら……場所を替えてしまえばいい。
瞬時に自身の場所とフランシスさんの場所を入れ替えて、自分の足元に、水平に白い扉を作り出す。
そして着地する寸前に扉を開いて、上手くまたモビーディックの甲板に戻ってこられた。
「白石!…また、無茶を……っ」
『……芥川さん達の方がよっぽど無茶してます』
「!よし、これで軌道が元に…____ぐへッッ!!?」
『あれ…?』
敦さんが制御端末を操作して、モビーディックの軌道が元に戻ろうと動き始める。
そして敦さんがホッとしてへたり込めば、その顔面に芥川さんが足を…相変わらず敵対心強いなこの人。
「今すぐここで八つ裂きにしてやりたいところだが…生憎力を使い果たした。次を待っていろ、人虎」
「お、前……次会ったら覚えてろよ」
私からしてみると少し微笑ましいその光景に口元を緩め、すぐにまた扉を作り出す。
扉を開けた先は…
「……うえっ!?何!何何!!?」
「って、本当にすぐ来ちゃった…え!?ボス!!?」
横浜の港で立っていた、トウェインさん達のところ。
『全く、いい加減慣れてよトウェインさん…フランシスさんの事、お願いします。モビーディックはなんとかするんで、出来れば早く病院に連れて行ってあげて下さい』
じゃあ、とそれだけ言い残して、フランシスさんをそちらに移動させて扉を消した。
まだ、やらなきゃならない事があったはずだ。
私の様子を見て目を丸くしていた芥川さんと敦さん。
そして、こちらに歩いてくるさっきの男の子。
芥川さんが攻撃しようとしたのをなんとか大丈夫ですからと押さえて、敦さんに顔を向ける。
『敦さん、今、鏡花ちゃんが輸送ヘリに乗せられてるはずですけど……ここからどのくらいのところか分かります?』
「!鏡花ちゃん?なんで蝶ちゃんが…」