第9章 天からの贈り物
『どう、したの…?貴方も、早くここから脱出しないと……』
「俺はほら、ちゃんとパラシュート持ってるから」
目の前の男の子は、懐からパラシュートを取り出して私に見せる。
だけどそれなら、尚更高度がある内に脱出した方がいいに決まってる。
『それなら、今からでも出よう?』
「ううん、俺は“ボス”から、あんたの傍についているよう指示を出されてる。部屋に行ったのにあんたいなかったから、ずっと探してたんだよ」
『!フランシスさんに?そんな事一言も……ああ、まああの人過保護だし仕方ないか』
それなら急いで上に行ったほうがいいな。
私が目の届く場所にいればあの人も安心だろうし、何よりこの子を脱出させられる。
……だけど何なんだろう、この違和感。
組合の拠点にこんな子供?
しかもフランシスさんが私につくよう頼んでおいたのに、パラシュートなんか持つかな普通。
それに、私につけるならいつもトウェインさんかルーシーさんだったのに、なんで今に限って顔も知らなかったような子と…
疑問は溢れるばかりだけれど、とりあえず上に行こうかと男の子に提案して、階段を伝ってモビーディックを移動していく。
『…あ、ちょっと待ってもらっていい?』
「ん?どうしたの?ここって執務室なんじゃ…」
『いいから。私が元々着てた服、どこかに隠されちゃってるの』
「服って…」
私も男の子も苦笑いを浮かべながら、フランシスさんの執務室にお邪魔した。
そこには倒れた椅子があって、床や壁にはヒビが入っている。
これは戦闘の跡…もう場所を移動したのか。
『……無い、ね。うん、能力使っても出てこないし、ここにも無い』
「能力って…あんた異能持ちだったのか?」
『まあそんなとこ…ほら、急いで甲板の方に行こ。多分ボスもそこにいるし、ちゃんとパラシュート使っていつでも逃げられるようにしてた方がいいよ』
今度は私の方から男の子の腕を取って、動きづらいものの急ぎ足で階段を登っていく。
途中で貨物用のエレベーターを見つけたものの、そこに行くまでの橋が壊れている上にエレベーターが閉まっていたため、無視して階段を登っていった。
「…………ごめん、しんどいだろ」
『ううん、これくらい大丈夫…!』
「うわ、ッ!?」
また大きくガタッと床が傾き、モビーディックが落下コースに突入したのだと悟った。