第9章 天からの贈り物
なんとか全員の致命傷を塞ぎ終え、すぐさま扉を作り出す。
扉の先は、今最もここからは無害な場所。
今日は何も予定が入っていなくて、誰かが来ることもないというのは把握済みだ。
『すみません、今安全な場所といったらここくらいしか思いつかなくて…横浜からだとちょっと遠いんですけど、作戦が終わったらまた迎えに行きますから』
「ここは……日本の学校…?」
「そんな事まで…」
そう、連れてきた先は、椚ヶ丘中学校 旧校舎の保健室。
数が少ないため寝台を全て並べて、横向きに構成員さんたちを寝かせるように移動させていく。
『致命傷だけ塞ぎましたけど、まだ傷はあるんで出来るだけ安静にしていて下さいね。ちゃんと後で病院に運びます』
モビーディックでの私の役目は、中にいる人達を全員死なせない事。
これは私の意思でやっている事で、フランシスさんに一度止められはしたのだけれど、結局我を通して承諾してもらったことだ。
この構成員さん達は昨日中也さんと対峙した人達でもあったから顔もしっかりお互いに覚えている。
本当にありがとうという言葉を口々に受けてから、微笑み返してモビーディックに戻っていった。
『……もう、構成員さん達残ってたりしないよね…?』
先ほどの一件から心配になってきたため、拠点内部を、扉を使わずにゆっくりと歩き回っていく。
メルヴィルさんとフランシスさん……それと、恐らく潜入してきているであろう芥川さんと敦さんの四人以外に、誰かがいたら大変だから。
隅々まで見回っていっているうちに、ガタンッ、という音と共に床が突然傾いた。
「……なぁ、っ!?」
それに身体をぐらつかせつつも何とか耐えようと脚に力を入れると、どこかから人の声が聴こえた。
急いでそちらに駆けつけて行くと、なんと、本当にまだ人が残っていた……のだけれど。
『!…貴方、誰?子供……?』
私が見つけたのは見たことのない子供…といっても私よりも背の高い人だった。
右頬にはほぼ垂直に交差した切り傷のような傷跡があって、歳は今の私よりも少し上くらい。
「こ、子供!?あんたの方がよっぽど子ど……っ」
『え、何?そんな見て』
「い、いや…どう見たって子供なのに……すっごい綺麗だなって思って」
『へっ…?……ま、まあいいや!とりあえず、早く避難を…』
言い切る前に、男の子に腕を掴まれた。