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第9章 天からの贈り物


トウェインさん達がルーシーさんの能力でモビーディックを脱出し、船内にはドクターさえもがいなくなった。

このモビーディックを異能力に持つハーマン・メルヴィルさんは、まだ会ったことはないのだけれど、作戦の結末を見届けるまで残るそうだ。

フランシスさんには写真で顔だけ見せてもらっているため、危なくなればすぐにでも駆けつけて救出出来るようにはなっている。

後は……上手く“三人”の対決に割り込まないように潜んでおくだけ。

キュ、と両手で指輪を包み込んでから、慎重に部屋の扉を開けた。

『…………全く、せめて私の元の服の在り処くらい教えてから出てってほしかったのに』

募るトウェインさんへの悪態をポツリと零しながら、全ての部屋を確認しに回るため、ひっそりと移動を開始した。





『あと探してないのって、フランシスさんの執務室と…ヘリのところ?あんなところに服なんか隠すかな…』

フランシスさんの執務室には、行かない方がフランシスさんが思いっきり動くことが出来るという事だし、後回しにしておこう。

そんな考えで、ほんの軽い気持ちで、ヘリの発着口へと扉を繋げる。
そしてそこに入った途端に、私の頭の中からは、元の服の事など一瞬にして消え去ってしまった。

「……ぐ、っ…………き、君は…ッ」

『!!喋らないで!じっとしてて!!』

まさかこんな方法で乗り込んで来るだなんて思っていなかった。
昨日の夕方に散々格闘したこの火傷混じりの深い傷…幸い皆息はあるようだけれど、重体の人がこんなにもいるだなんて。

この傷を負わせた張本人…芥川さんがここに乗り込んでくるだろうという事は予測が付いていた。
しかし、モビーディックに単身潜入をするのならば、もっと他にも方法があったはず。

ヘリを襲ってそれを乗っ取って潜入してくるだなんて、どうして考えつかなかったのかと思う程に芥川さんらしい潜入方法だ。

ヘリの中と外に横たわる傷ついた構成員さん達をテレポートで一箇所に集めて、息の浅い人から順番に細胞を移植していく。
肩代わりをするのはいけないし、今回はマーガレットさんの時ほどのものではなさそうだから、脱出時間までには間に合うはずだ。

「あ、ありがとう…助かった……」

『いいですから、楽にしててください』

深い傷を優先して、一つ一つ確実に、傷が塞がっていくのを確認していった。
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