第9章 天からの贈り物
『私、そんなお礼を言われるような人じゃないの…言われちゃいけないような人なの』
「そんな事ない。きっと、誰かのためになってるから」
『…っ、思い出せたら、ちゃんとどういたしましてって言ってあげる』
ひねくれた態度の私に幸せそうに微笑み返して、トウェインさんは私と目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「……ねえ、本当にここに残るの?ボスは本気でモビーディックを落とすつもりだよ。横浜を焼くつもりなんだよ」
『うん、残るよ。私、能力使えば何でも移動させられるから。フランシスさんが危なくなっても、私がいたら助けられるし………死人を出すつもりはないから』
「そっか……そうだったね。じゃあ僕もそろそろ行こうかな」
私の頭に軽く手を置いてから、トウェインさんは立ち上がる。
なんだかんだいってもやっぱり名残惜しい気持ちは残るもので、自分に呆れながらもトウェインさんの目を見つめた。
『…作戦がどう転んでも、また会いに行くからね。だからそれまで、ちょっとだけ待っ____……ッ!!』
誤魔化すように、自分に言い聞かせるように、また会えるからと言おうとしたのに。
ちょっとだけのお別れだよって、言いたかったのに。
額に柔らかく口付けを落とされて、ゆっくりとトウェインさんは私から離れる。
突然すぎるそれに顔を熱くして手で額に触れれば、クシャリと無邪気な笑顔を浮かべられた。
トウェインさんのこんな表情、初めて見た。
ドキドキと鳴り止まない胸に気付かないふりをして、何も言えずに目を見開いたままトウェインさんの顔を見る。
「じゃあまたね!会いに来てくれるの楽しみにして、僕も甘いもの作れるよう練習しておくよ。中原君のとこが嫌になったらいつでも来てくれていいからね!」
『い、いきなりこんな……ッ、トウェインさん!?』
「もう独りで泣いちゃだめだよ!笑って笑って!!」
『……うん、またね、トウェインさん…っ』
あっさりと、素早く出て行ってしまったトウェインさんに、私の声は届いたのだろうか。
…きっと届いてる。
しつこさが売りのトウェインさんだもん、大丈夫。
「___バイバイ、僕の初恋の人」
「何が笑って、よ…あんたが一番泣いてるじゃない」
「~~~っ、泣いてない!」
「ひっどい顔してるけど」
「皆でカラオケにでも行くかい?」
「行く…ッ」