第9章 天からの贈り物
『上から発砲って、それトウェインさん大丈夫だったの?』
「見事に僕だけ無傷で、他の大人達の手だけに命中してたよ」
しかも利き手だけに。
利き手に傷を負わせて攻撃手段を奪うというのは私がよくやる方法だ。
それだけで相手の戦力を削げるし、即死させ損ねた時やその場ですぐに殺してはいけないような場合によく使う手段。
その発砲者も、仕事か何かでその大人達を追っていたというのが筋だろうか。
「で、大人達が痛みに苦しんでると、目の前に銃を撃った人が飛び降りてきてさ。そこの大人達を、みんな素手で気絶させていっちゃって……その人が大人を全滅させた頃に、僕の周りには何故だかたくさんの真っ白な蝶々が舞ってたんだよ」
『!!…え、嘘……それって…』
「そう、僕の目の前に突然現れた女の人はね。すっごく綺麗で真っ白な人で…大人達を回収してどこかに行っちゃった後に色んな人に聞いて回ってみたら、皆口を揃えて零だって言ってたんだ」
驚いた。
トウェインさんは確かに以前、私に助けられたと言っていたのだけれど…でもどうしてだろう。
私は殺した人の事や殺した時の様子など、考えないようにしていても忘れられないような質だ。
だけどトウェインさんに話されたような記憶は、私の中には全くない。
人を連れ去ったり殺したりしたところに子供がいただなんてこと、あったらそれこそ珍しすぎて覚えているはずなのに。
『…それ、人違いとかじゃあないの?だって私、自分の任務の最中に子供を見かけた記憶なんてないよ』
「絶対人違いなんかじゃないよ、君の今の写真を見ただけでも僕は衝撃を受けたくらいだし。しかも真っ白な蝶の能力なんて、蝶ちゃん…が活躍するまで、零以外に存在なんてしていなかったでしょ?」
『確かにそうだけど…っ、私が、人の助けになるようなことを……?零が…?』
自分自身が一番信じられない。
零が心を持つことなど、許されることではなかったから。
私情を挟んでその場で私の任務を見ていた子供を放置していくだなんてこと…そんな事をすれば、自分に何が起こるかなんて、目に見えて分かっていたから。
冷や汗を垂らしていれば、カメラを仕舞い終えたトウェインさんが私の元に来て、両手をふんわり包み込む。
「君の銃撃に見惚れて、練習して腕を上げて……現に今、僕はこうやって生きてるからね。改めて、本当にありがとう」