第9章 天からの贈り物
「ほう、成程。それでそんなにも甘いものが好きなのか」
『元から好きだったのもあって余計にですよ』
心の底から甘いものを食べて楽しめたのなんていつぶりだろう。
どこの世界でもたくさん食べる事は勿論あった。
甘いものだけは食べていられた。
だけど、やはり独りで食べるというものは虚しいもので、周りの人と壁を何枚も隔てて生活していた私には、ただのその場しのぎの一環にすぎなかったのだ。
元いたところを思い浮かべるように、大切な人達の事を忘れないで、楽しいひとときを唯一思い出せたのがその時間。
それが更に虚しいものであったのだけれど、中也さんと出逢って、一緒に食べるということ自体に色々なものを感じられるようになった。
自分の中ではある程度元の世界の事は割り切っているし、中也さんがいてくれるんなら甘いものを食べていても虚しくなんてならないから。
____例えそれが、短い間のその場しのぎの幸福にすぎないものだとしても。
『それにほら、食べたいものは食べれるうちに食べておかなくちゃ勿体ないじゃないですか』
「……ふふふ、じゃあ蝶ちゃん、忘れてるかもしれないけど…これをちゃんと食べきったら御褒美があるよ!」
『!御褒美?何??』
トウェインさんの声にわくわくして食いつけば、大きな冷蔵庫を開けられて、中に入った大量のそれを見せられた。
そうだ、色々ごたごたしてたから忘れてた。
「プリン!折角こんなに買ってきてこれだけ残ってるんだし、明日の作戦も作戦だし、もう食べたいだけ食べちゃいなよ!」
『い、いいの!?そんないっぱい…』
「物欲しそうに目輝かせながら何言ってんのさ、大人に甘えて遠慮せず食べなよ」
その言葉にジョンさんの方を振り向いてから、フランシスさんの方も見る。
「俺もジョン君もトウェイン君も、多くても二つ程で十分だからな。残りは好きなだけ食べればいいさ」
『!!やっ「ただし、それちゃんと全部食べれたらね?」た……』
希望を打ち砕かれたような顔になって、無言ですぐさま箸を進め、無理やり胃袋の中に詰め込む。
え、早!?と一斉に驚かれはしたけれど、あのプリンのためだ、食べざるを得ないだろう。
完食して手を合わせてごちそうさまをして、バッとトウェインさんに顔を向ける。
『た、食べた!食べました!偉い?』
「!…うん、偉い偉い。じゃあ御褒美だね!」