第9章 天からの贈り物
ジョンさんによって全て暴露されてからこっぴどく無茶ばかりしてと絞られ、そしてほぼ強制的に鉄分満天メニューを大量に食べさせられる。
作戦についてはやはり予想していた通りのもので驚きはしなかったのだけれど、それに思考を割く余裕もないほどに今は食べるのに必死だ。
『……も、無理』
「ん?食べれるよね?昼間山盛りデザート四皿平らげてそこからパフェとかアイスとかチョコフォンデュとか、山のように食べてたよね?」
『甘いのは甘いの用の胃袋が「無いでしょ」ぐう、っ…』
完全に言い負かされてる。
トウェインさん相手になんという屈辱。
トウェインさん相手に…立原二号なんかに。
『だ、だって私これもう何人前食べてると思って…っ』
「「「いや、それ普通に一人前」」」
『こんないっぱい!?』
コース料理のようにメニューが豊富だから余計にお腹にくる。
ダメだ、こんな量食べてられない。
「そんなだから背ちっちゃいんだよ蝶ちゃん」
『うるさい、中也さんに可愛がってもらえるサイズだからいいんだもん』
「あ、開き直った。でも一人前くらいせめて食べよう?毎度思うけど、流石に君の身体が心配になってくるから」
トウェインさんの声にピタリと手が止まる。
『……だって、ご飯なんてそんなに食べる事なかったんだもん。食べなくても大丈夫だったし…まだご飯食べるのは身体に抵抗あるし』
「あー…そういうこと。ごめん、そこまで気が回ってなかったね。でもそれならさ、なんでそんなに甘いものは好きなの?有り得ないくらいの量食べてるよねいつも」
話題を上手く逸らしてもらって、頭の中に花が咲いたようにデザートの事を思い浮かべ始める。
え、なんかいきなり生き生きしすぎじゃない?なんていうジョンさんの声は無視だ、無視。
『うん、甘いのはね、昔から大好きだったってのもあるんだけど…』
最初、元いた世界でも大好きだった、甘いもの。
優しい人たちが私にたくさん教えてくれて、一緒にいっぱい食べに行った。
そんな思い出の詰まった甘い甘いデザートを、この世界で誰かとその美味しさを共有する日が来るだなんて、夢にも思っていなかった。
『………横浜に来て、中也さんが作ってくれたものの中で、初めて食べたやつだったの。今の方が料理上手なんだけど、それでも美味しかったのは覚えてる…いくらでも食べれちゃうくらいに』