第9章 天からの贈り物
『中也さんね、最近私が言われたことないって言ってから、可愛らしいとか言うようになったの。でも、そういえば綺麗綺麗ってずっと言ってたなあって……あの人、私に綺麗って言う時、すっごい優しい目になるんだ』
「可愛いと綺麗、ねえ…」
「正直僕の第一印象からしてみると、綺麗の方が先だったけどね。で、可愛いところとかは後から知って、子供らしいところあるんだなって感じ?」
ジョンさんの言うことに少し驚いた。
よく第一印象から子供らしくないと思われる事はあって、立原だってそう言っていたものだし、可愛げもないと言われていたはずだ。
「言ってしまえば僕なんて零の頃を見てるから、余計に綺麗だなって思ったんだけど…でも普通に、綺麗って言うのはかなり照れるしあんまり口には出せないかな」
『トウェインさんが口に出せない?』
「はは、言われてるよトウェイン。でもまあ、気持ちは分からなくもない」
ジョンさんまでもがその意見に納得していて、更に疑問は深まるばかり。
それなら尚更気になるじゃないか、中也さんが綺麗だって言う理由が。
『男の人ってよく分かんない…』
「ある程度の個人差はあると思うけど…可愛いとかはまあ、どっちかっていうと言いやすいんだよね。だけど綺麗ってなると、本当に心の底から感動して、ついつい見惚れて声に出しちゃう…みたいな?」
「あ、それだね多分。綺麗って本当に思える子とか大人でも滅多にいないし、何より本当に感動しないと強くそうは思えない……人にもよるだろうけど、中原君が最初からそう言ってたって事は、相当蝶ちゃんに見惚れているのか…」
それか、蝶ちゃんくらいに綺麗な子が好みなんじゃない?
トウェインさんの言葉に、前に一度、綺麗だというのが一番の褒め言葉なのではないのかと考えたことを思い出した。
私くらいにと言われるのは流石に大袈裟すぎるとも思うのだけれど、言われてみれば、確かに髪を伸ばしてるのもあの人に綺麗だって言われたから。
『…なんか複雑』
「まあ、綺麗って言われるより可愛いって言われたいのが女の子心だよね。でも綺麗って思われる子って、本当に滅多にいないと思うよ」
「そうそう、蝶ちゃんくらいになると特にね。綺麗……っていうか最早神聖にさえ見えてくるや」
『流石にそれは言い過ぎな気が…』
神聖にって。
私はそんなものからは最も遠い存在なのだけれど。