第9章 天からの贈り物
『わ、たしって…ひゃ、っ…!!』
左の頬に、輪郭に合うように手を添えられ、小さな刺激が身体に走る。
「ほら、彼、君には痛いことなんて出来ないだろうからさ。後、言うこと聞かないとこの子にキスでもしちゃうよ〜とか……冗談だって」
寝台を挟んでジョンさんの向かい側にテレポートすると、苦笑いを浮かべられた。
『じ、冗談にもやっていい事と悪い事とあるでしょう!!?だ、だいたい、言うこと聞かないととか言ってる間に中也さんなら相手の事倒してくれますし!!』
「あ、確かに」
『確かにじゃないですよ!殺されますよ本当!!?』
言ってから、自分の身よりも中也さんに殺されかけてしまうであろう相手側の事が心配になり始めた。
…あの人、目の前で私が何か嫌がるようなことされてたら相手に容赦ないしなぁ。
鷹岡の時とか、あそこが校舎じゃなくて横浜だったら、本当に殺されてた可能性あるし。
『……本当、あの、やめた方がいいです』
「すっごい顔色悪くなってるけど君?うん、絶対やめとくね、怖くなってきた僕」
『私でもたまに怖い時あるんで…』
冷や汗がたらりと流れて、ついつい引き攣り笑いになった。
私の立場からしてみれば助かるだけだし嬉しいのだけれど、相手が私の敵でなければ話は別だ。
けどあの人も変なところで私のためにとかって殺さなかったり手出すの我慢したりするから、多分良くしてくれる人は大丈夫……多分。
「冗談言うのも今にしといてよかったね、うん。彼の前でやってたら異能だけで僕今頃ぺちゃんこにされてたよ」
『あはは…まあでも、まだ中也さんは優しい方だと思いますけどね』
ジョンさんにどうして?と聞き返されたため、スウッと熱が冷めていき、目線も声も冷たいものとなっていく。
『ほら、もし私の目の前で中也さんに何かしようものなら…何しちゃうか分かりませんから』
「ああ、うん、君の方が恐ろしいのはよく分かった。こりゃあ誰にも勝てないわ、うん」
『ありとあらゆる手を尽くして散々に生き恥を晒させてから、じっくり…そしてゆっくりとどめを「ちょっとそこなんて怖い会話してんのさ!!?」!あ、トウェインさん』
突然響いた大きな声に振り向くと、完全に怯えきった様子のトウェインさんが医務室の入口から入ってきた。
『いやほら、あれですよあれ……天誅?』
「可愛く言っても怖いからね!!?」