第9章 天からの贈り物
「!こんなのどうってことないよ!だから君は心配せずに…」
『嘘、背中思いっきり痛めてるでしょ』
私の的確な指摘に、太宰さんも流石に驚いたようだ。
『軽く血を出すくらいには無理してるんだから…移し替えてもいいですけど、それしたら中也さんにバレちゃいますし、本当にもう無理しないで下さいよ?じゃないと私、あの人に顔向けが……____ごめんなさい、蒸し返すような事言って』
「…ううん、君は寧ろ話をしてくれなさすぎるから、その方が私も安心出来る。それに可愛い蝶ちゃんにたまにでも話してもらえてた方が、彼だって嬉しいさ」
ポン、と頭を撫でられて、心配しなくてもいいよ、話してくれてもいいんだよと伝えられる。
太宰さんは、とっくに立ち直っているのか…私の心配のしすぎだったのか。
『……うん。…じゃあ太宰さん、私もそろそろ行きますし、中也さんの事お願いしますね』
「ゲッ、本当に私がこいつを?途中でその辺の道路にでも捨てていってはいけないかい?」
『それでもし中也さんが車に轢かれでもしたら、私が太宰さんに仕返しするけど』
「流石の私も痛くて苦しいのは嫌だなぁ…仕方が無いから自分の身の安全のためにもちゃんと連れて帰るよ」
命は大事ですからねと微笑むと、苦笑いで返される。
『中也さんの敵は私の標的になりますから……後、出来るだけ女の人とくっつけたりしないでね。絶対絶対やめてね、私がいない間にベタベタなんてしてたら本当に女の人の方が危ないから』
「う、うん、分かった分かった…といってもこいつなら、隣にどんな美人さんがいて声をかけられ続けたとしても、蝶ちゃんの事ばっか考えて何も聞かなさそうだけどね」
太宰さんの言葉に昼間の中也さんの態度を思い出して、本当にそんな気がしてきた。
私にしか興味が無いって、まさかそんなレベルで……まさか、ね?
『それなら嬉しいなぁ…じゃ、お願いしますね。帰ってる最中にもし中也さんが襲撃されるようなことでもあれば相手の特定だけお願いします、私が直接手を下しに行くんで』
「はいはい、心配しなくてもそんな事起こらないから」
『…じゃあ、また』
ヒラヒラと手を振る太宰さんに会釈してから、医務室に入って扉を閉めた。
「で…いったいどこから聞いていたんだい?」
「………キスマーク付けられたあたりから」
「寝たふりだなんてずるいねぇ…」