第9章 天からの贈り物
そっか、本当に初めから、この人は“私”を見ていてくれたんだ。
私にも太宰さんにも悟らせなかった…ううん、本心から私のことを見て、真正面から接してくれていた。
受け止めるとかそんな言葉、それこそこの人の言う“次元が違う”というものなのだろうか。
本当に、私もこの人も、頭がおかしいくらいにどうかしてる。
普通じゃないのが普通だなんて、この人の頭は本当に元からおかしかったのかもしれない。
『馬鹿だよ、本当に頭おかしいよ…』
「うん、だからさっき言われたみたいに、本人に思ってる事を伝えてしまえばいいさ。蝶ちゃんの…いや、“君”の思っている事を」
卵子が…それどころか卵胞さえもが存在していないこと。
それは本当に、知っていたから驚いていなかっただけ。
中也さんが今までに私から言われて驚いていた事だなんて、考えてみると、確かに私が中也さんに思っている事を吐き出した時くらいだった。
私の身体や能力について驚かれた事なんて…離れようとしたり気味悪がられたりしたことなんて、ただの一度だってこれまでに無かった。
「こいつは君が思う程には頭がおかしいくらいに君の事が大好きだよ。それだけ思っている子から自分だけのものになってくれだなんて可愛いわがまま言われて、嬉しくならないはずがないだろう?」
君も同じくらいには、軽くこいつの事を思っているんだろうからさ。
中也さんが隠してる事なんて、こう考えるとまだまだあったっておかしくはないのかもしれない。
私のためになら、本当に頭がおかしくなってしまう中也さんだから。
私の言うわがままなんて、この人からしてしまえば、どうってことないものなのかもしれない。
結局私の言うわがままって、中也さんを独り占めしたいだけだから。
結局は、中也さんが大好きなだけだから。
『どうかしてますよ、それ…案外束縛される方が好きなんですかね?私にキスマーク付けられて嫌がりもしなかったですし』
「蝶ちゃん以外からされたらそれこそいらいらして殺しちゃいそうだけどね、手だって出しちゃうだろうし。でも君相手にならそんなのどうってことないと思うよ?結局どう転んでも、君が自分のものになりたいって意思表示をしてくれているに過ぎないことなんだからさ」
「頭がおかしい奴の考える事は分からないよ、本当。君にならストーカーされてても喜びそうだし」
『ふふ、確かに』