第9章 天からの贈り物
「……蝶ちゃんの想いは、実際に怖くなるくらいには伝わったよ」
『ごめんなさい、いきなりこんな話までして。だけど私、知っての通り重いんです…重すぎるんです。蝶の分だけでも重たいのに、もっと根深いところまで重なって』
中也さんを慈しむように見つめて、再び軽く腕に力を入れた。
最初の私が、始まりの私が…白石蝶の核となる存在が、この人の事を欲してやまない。
『この人を悲しませるわけにもいかないから誰も殺したりなんてしないし、自分でも気が狂いそうになるくらいの嫉妬心だって見て見ぬふり出来るんですよ』
「見て見ぬふり……そんな悲しい事をせずに、はっきり本人に伝えてしまえばいいのに」
ジョンさんの信じられない発言に目を見開いて、ゆっくりそちらに顔を向ける。
『伝えて…どうするんです?考えてみて下さいよ、自分が異性と絡んでいるのを……話しかけられて甘えつこうとされてるのを想像するだけでも殺したくなるだなんて、普通に怖いと思いません?気持ち悪くないですか?』
「そりゃ、相手が自分の嫌いな人ならね。だけど、自分の事を想ってくれてるような子に、そんな風に予想もつかないようなレベルで想われてるんだなって思うもとさ…可愛いなって思うし、ある意味それにそそられる」
『!…そ、そ……っ?』
彼くらい君に想い入れがあるんならもっとそうだと思うよ、とジョンさんは笑って言う。
太宰さんの方を向いても微笑んでいるようだった。
「男は元々独占欲の塊さ。自分のものにしておきたい女の子にそれだけ従順に強く想われてると、寧ろ満たされるものなのだよ……それにこいつ、蝶ちゃんが想像つかないレベルに蝶ちゃんの事に関してなら頭おかしいから、心配しなくて大丈夫」
『頭おかしいって…』
「……ここだけの話だ。本人は隠しているらしいが、私はこいつなんかどうでもいいし、蝶ちゃんに安心してほしいからいってしまうね?」
太宰さんの含みのある言葉に首を傾げて何なのだろうと想像する。
中也さんが隠してる?
私に隠してる事なんて、そんな事を聞いてこんなに色々と重たい私が安心なんて……そう思っていた。
「中也はね、君の実験データを見ていたのだよ。文書、画像、音声…そして映像……全ての種類の実験を、全ての記録を、隅々まで頭の中に入れている。君を連れ帰ったその日から、狂気にも似たその本能に従っていたんだ」