第9章 天からの贈り物
「ていうか、それにしてもまさか蝶ちゃんが来るとは思ってなかった。しかもまたそんな綺麗になって…」
「今日のは僕とボスが気に入ってたやつだね、その紫」
『え、ジョンさんもフランシスさんも何してんですか』
驚愕の事実を知ってフリーズする。
『ていうかドレスばっかり着せるくせして、トウェインさん全然元の服返してくれない…』
「今回ばかりはあいつもいい働きしてんな」
『全っ然いい働きじゃないんですけど』
中也さんに真顔で返せば、ピラリと中也さんの外套をはだけさせられ、スルリと脱げて肩が顕になる。
突然はだけさせられたためにピクリと肩が震えたものの、中也さんは何を考えているのやら、じっとこちらを見つめたまま何も話してくれなくなった。
「中也、流石にセクハラもその程度に……?あれ、ちょっと蝶ちゃん、そのキスマーク誰に付けられたのねえ!!?」
「あ、本当だ。まさかトウェイン…なわけないか、あいつはああ見えてヘタレだし」
なぜかディスられるトウェインさんを哀れに思いつつも、中也さんの視線になんだか余計に恥ずかしくなって、少し身を捩る。
「って、よくよく見れば中也の方にも……えっ、なんか君すっごいつけられてない?どうしたのこれ、サービス精神旺盛なキャバクラにでも行ってきたの?」
「全部蝶につけられて、つけ返した」
「へえ、それ全部蝶ちゃんが…………蝶ちゃんが!!!?」
『ち、中也さん…?そんな見られると流石にその、は、恥ずかし……っ!!?』
太宰さんの言葉に返事をする余裕もなく中也さんに話しかければ、急に私に向かって倒れ込んできて、中也さんは私の体の上に倒れ込むようにして乗ってきた。
そのまま私の身体に手を回してギュッと抱きしめて、驚いて体を動かしてしまったものの離れてくれそうにはない。
『ち、ちち中也さん!!!いきなり何を___』
「____綺麗だ…」
『……へ、…っ?』
ポツリと小さく呟かれた声に聞き返すと、グッと身体に中也さんの体重がかかってきた。
それに戸惑って中也さんに話しかけるも、応答はない。
しかし少ししてから、グウ、といった響きが耳に届き始めるようになる。
『…………ちゅ、うやさん…?』
「中也、まさかこいつ……やっぱり。蝶ちゃん、中也寝ちゃったみたいだよ」
『え、寝て!!?…って、まあ……汚濁の後でしたね』