第9章 天からの贈り物
「中也…流石の私も怒るの通り越して発狂しそうなのだけれど、殴ってもいいかい」
「よくもまあ人の目の前でこんないたいけな女の子の唇なんて奪ってくれるよね君、デリカシー無いってよく言われない?」
「はっ、羨ましいのは分かるが揃って大人気ねえこと言ってんじゃねえよ。見てみろよ、蝶だって結局俺んところからくっついて離れねえじゃねえか」
中也さんからのキスになんて慣れれるはずがない。
いっぱいしたし、時には自分からお願いだってしたこともある。
けどふとした時にとかいきなりとか、そんなのに慣れるほど私は男性経験が豊富なわけではないのだ。
ていうか結局何されたって恥ずかしいものは恥ずかしいし。
中也さんの背中に腕を回して顔を隠すようにしがみついていると、中也さんの予想通りだったのか、随分と中也さんの声が上機嫌なものになった。
やられた、完全に仕返しされた。
『……ッ、ばか…っ』
「あ?何だって?まだ足りな………ごめんって、悪かったって。だから離れんなよ折角今俺気分いいんだから」
流石に調子に乗っていたため手を離すと必死に謝られた。
ていうか何、なんで私なんかにくっつかれてて気分がいいのよ、意味分かんない。
「「君が一番大人気ないよ」」
揃って言う太宰さんとジョンさんの言葉に心の中で酷く賛同した。
「うっせ、してえんならやってみればいいだろが。まあ蝶は手前らなんぞ視野にも入ってねえだろうがな」
『…?やってみるって、何するの?』
「は?……え、おま…今の話の流れ的に……え、マジで分かんねえか?」
コクリと頷けば太宰さんがニヨニヨし始めて、何をするのかな~?と中也さんを弄り始める。
「な、何でもねえよ!!今のは忘れろ!!!」
『中也さんは…私のことどうしたかったの?』
「「「ブッッッ!!!」」」
言った瞬間、三人揃って噎せ返った。
拙いことを聞いてしまったのだろうかと思ったが、太宰さんとジョンさんが笑いを堪えているのを見ると、罪悪感はわいてこなかった。
「お、前は…っ、マジで実は馬鹿だろ!?なあ!!?」
『馬鹿は中也さんじゃない、私の方が頭いいですし。あと天然、鈍感、私バカ』
「全部前科があるせいで否定出来ねえのが嘆かわしいわ!!!」
『ふふ、私に勝とうと思うんなら後千年は要りますね』
リアルな年数やめろ、と軽く頭を叩かれた。