第9章 天からの贈り物
組合の君もそう思うよねぇ?
太宰さんが目を向けた先には、ジョンさんが少しこちらに近づいて来ていた。
「ああ、全くだ…こんなに優しくて心が広くて、更には君の事を一番大事に思っているこの子をキレさせるだなんて」
「手前ら何の嫌がらせだ!!つかさっきまで思いっきり敵対してたよな確か!!?」
「残念だけど、この子を泣かせた時点で君が敵なのは確定事項だったんだよ。本当に罪深いことをする…蝶ちゃんだっけ?こんな男放っておいて、とっととトウェインと駆け落ちでもしたらどうだい」
「「駆け落ッッッ!!!?」」
相当衝撃的だったのだろうか、あの中也さんと太宰さんが、またもやピタリと声を重ねて反応する。
『そうですよね、本当。トウェインさん優しいし、少なくとも中也さんよりはデリカシーあるし』
「ひッ!!?ち、ちち蝶!!!?」
『本当に……なんで中也さんじゃないとダメなんだろ』
なんで、なんて言うまでもない。
挙げていけばキリがないほどに、この人が私の一番なのは当たり前で、他に勝る人はいない。
『いい人なんて周りにいっぱい……っ、?』
中也さんは酷く情けない声を出してはいたが、すぐに顔色を戻して私を抱く腕に力を入れ、頭を撫で始めた。
「うっせぇ…俺だからだろ」
『!……ん』
いつもの調子にちゃんと戻ってくれているのが分かって安心した。
撫でてもらえて、ちゃんと手で優しく触れてもらえて、酷く泣きそうになった。
「うっわぁ、さっき散々頭おかしいにも程があるとか言ってたくせしてもうそんな事言ってる」
「図々しいにも程があるね、女の子からのハグのリクエストを目の前であんな断り方しておいてさ」
『あ……中也さん、そういえばさっき…』
二人の言葉で中也さんとのやり取りを思い出して、中也さんの背中から腕を下ろしてニコリと微笑む。
いつもならばそれであたたかな雰囲気になれるものなのだけれど、今回は三人とも何かを感じ取ったのか、たらりと汗を流してどうしたのとぎこちなくこちらを見る。
「ち、蝶……さん?俺がさっき…?」
『うん……中也さんさっき、私に叩かれちゃったから、頬大丈夫かなって』
「大丈夫だこんなもん!お前、俺の丈夫さはよく知ってんだろ!」
『そっか、それは良かった。で?私にキレかけた事について何か思う事は?』
「………は?」
『言ったよね、手前って』