第9章 天からの贈り物
「嘘じゃないさ、蝶ちゃんがいるのに、私が汚濁形態になった中也を見捨てて帰れると思うかい」
『思わない…けどそうじゃなくって……!!じゃ、じゃあ本当に私が止めに入ってなかったら、本当に危なかったって事ですか!!?』
「おい糞太宰、手前俺にあんだけ偉そうに啖呵切っといてそれか?ああ?」
今にも太宰さんに殴りかかりそうな中也さんを腕を回したままなんとかグググ、と押さえて止める。
「いや、私も驚いた…あの触手は異能力ではなかったらしいからね。消えることなく首に巻きついていて、本当にあの状態のままでは防御が外れて窒息するのも時間の問題だったさ。蝶ちゃん、本当に有難うね」
『!…いえ……私は元々別の仕事で来てたんで。まさかこんな事になってるだなんて思いもしてませんでしたけど』
「「うぐ、ッ…!!!」」
私の発言にグサリと胸に矢が刺さったのか、二人して苦い声を漏らした。
「し、仕方が無いだろう!?中也が破壊しきれていなかったやつが首と木に巻きついてだね!!」
「おい手前それ全部俺に擦り付ける気かこの野郎…」
「だってそもそも、あの触手を見た途端に血相変えて攻撃し始めたのは中也の方じゃあないか」
「ああ!!?あいつは蝶への仕返しでだなぁ!!!……ああ!!!?」
言うつもりはなかったのだろうか、中也さんは顔を突然真っ赤にさせて、至近距離に…というよりくっついている私を見る。
それに小首を傾げて中也さんを見つめ返すと、パッとすぐに逸らされてしまった。
「何何中也、もしかして照れてる?さっきあれだけ怒らせた蝶ちゃんの事見てもう照れてる?」
「さっきからマジでやかましいな手前!!?」
「手まで出させてビンタされてもまだ懲りずに態度を改めてなかった人間がよく言うよ、この蝶ちゃんに中也の事叩かせるまでの事を言うだなんて」
太宰さんが勝ち誇ったようにはっ、と嘲笑する。
いつもならそれに食ってかかっていくのだけれど、今回ばかりは本当にやらかしたと思ったのか、何も言い返せず悔しそう。
「だいたい君ねえ、何蝶ちゃんにキスまでしてもらって遠ざけようとしてるのさ、意味がわからないよ私には。第一中也が蝶ちゃんに攻撃してから、このこはすぐにまた君にキスをしたというのに」
「それには理由があってだな!!」
「この蝶ちゃんをキレさせた奴が何を」
「んだと!!?」