第9章 天からの贈り物
『中也さんの手が汚い…?そんな事、あるわけないじゃない…中也さんなんかより私の方がよっぽど……』
「…………俺の手を、見てみろよ…っ?素手の癖して、何でこんなに血がついてんだ…うろ覚えでも嫌なくらいに分かる」
だから、そんなのなら私の方がよっぽどたくさん手を汚して来たんだからと…そう言葉にした瞬間、中也さんが冷や汗を流してこちらを見る。
「お前、んなもんと一緒にしてんじゃねえよ…よく考えてみろ、俺は今、この手でいったい何をした?何を、貫いた…何を、危うく殺しかけた…っ!!?」
『!!中也さん、さっきのは私が不注意だっただけで……ッ』
「お前の不注意が要因なわけがあるか!!!!んな事言われなくったって自分が一番分かってんだよ!!!……ッ、お前が咄嗟に身体を曲げてなきゃ、俺はッッ!!!!!」
そこまで言って、口にするのをやめてしまった。
触れたいのに、抱きしめたいのに……今、一番抱きしめて欲しい人なのに。
『……中也さん、触っちゃ、ダメ?…私っ、中也さんに触れたいよ………ギュッて、してほしいよ…』
「…俺の手が、お前に手を上げたんだぞ……?こんなもんに近寄るんじゃねえっ…、こんな、お前の血を浴びても嗤ってたようなバケモンに寄り添おうとすんじゃねえ!!!」
『中也さんは普通じゃない!!なんでそんな事言うの!?なんで…ッ、なんで私の前で化物だなんて言っちゃうの…っ、?』
中也さんと同じ普通になりたい私がいた。
中也さんは私を普通だと言っていたけれど、身体にあれだけ大きな穴が空いて死なないだなんてどうかしてる。
なのに、なんで私が憧れてやまない普通の貴方が……そんな悲しい事を口にするの?
なんで中也さんが、私を遠ざけようとするの…?
「お、前…ッ、何言ってんだ?そろそろ頭おかしいにも程があんだろ…っ?下手すりゃ今!ここで!!……っ、白石蝶が死んでたんだぞ…!!!?」
『中也さんは汚濁を使ってたから仕方がなかっただけでしょう!?死んでないから良いじゃない!私は約束守って死ななかったんだから、良いじゃない!!!…約束守ってよ……っ、今日一緒にしたばかりじゃない……ッ』
胸の奥からどうしようもない気持ちがこみ上げる。
今日、言ったばかりなのに…二人で約束した、ばっかりなのに。
『一生大事にするって……っ、見捨てないって言ったのはどこの誰よ!!!?』