第9章 天からの贈り物
何ヶ月か前までの生活のように、ただただ身体を震わせて、中也さんの存在を探し続ける。
あれ、おかしいな、すぐそこに中也さんはいるはずなのに…
ダメだよ、大事な人が出来ちゃったから…心を許すような人が出来ちゃったから、痛いのがもっと怖くなっちゃったんじゃない。
八つ当たりをするようにこんな事ばっかり考えながらも、中也さんが怖くなって、なのに中也さんがいてくれなきゃたまらなくて、それが更に自分に恐ろしく感じさせる。
「……俺…この手……っ?」
しかし、実験施設にいた頃のように震えていた身体も、中也さんの声によってすうっとそれが引いていった。
彼の声を聞いて安心したからなどではない。
中也さんの震えた声が嫌に耳に響いてきて、ふと頭のどこかでトラウマなんかよりももっと恐ろしいものを感じ取ってしまったから。
『…!……ちゅ、うやさ…っ……?』
何とか顔を上げて中也さんの方を向き、今自分の体が何の衝撃も受けずに浮いていられたのは彼の異能のおかげなのだとここでようやく認識した。
そしてそれと同時に、視界に映ったのは、見たこともない程に怯えているような中也さんの姿だった。
____やってしまった。
瞬時にそう悟った…わかった時には、遅かった。
分かるのが遅すぎた、事前に防ぐべきだった、そもそも自分で何とか避けきるべきだった。
中也さんの異能が解けたのか私の身体はゆっくりと地面に着地して、元々の疲れと先程のダメージが相まってガクッと今度こそ膝から崩れ落ちる。
驚く程に膝に力が入らなくて、もう傷も塞がりきってて痛くはないはずなのに、恐怖からか凄まじいダメージからか、全くその場から動けそうになかった。
だけど目の前で自分の手を見つめて震える中也さんを、早くなんとかしなければ……貴方のせいじゃないんだよって、伝えなければ…
片手を地面について体を支えながら、もう片方の手で中也さんの震える手に向かって手を伸ばす。
『中也さん……、大丈…____』
「!!触んじゃねえ!!!!!」
しかし、勢いよく彼の手によって、私の腕はバシッと振り払われる。
…嘘、私……中也さんに、拒絶された?
私が痛がったりなんてしたから…恐いって思っちゃったから…
『…中也さ、ん……?な、んで…?折角、元に戻って…』
「…ッ、汚ねえ手に触んじゃねえ……っ、俺の手なんかに………!!!」