第9章 天からの贈り物
何してるの…何してるの……
頭の中を廻る言葉はこればかり。
無理しないって、無茶なことしないって言ったじゃない。
それを使うだなんて聞いてないよ…教えてくれてなかったじゃない…。
『……言ったのに、なんで…?…………何、してるのよ…っ?』
ちゃんと私、言ってたじゃない。
それは、それだけは嫌いだって…“汚濁”だけは絶対にもうやめてって。
ペタリとその場にへたり込めば、怪物…触手がたくさんあるのを見るとラヴクラフトさんだろう。
ラヴクラフトさんの身体が、何故だか突然爆発した。
私の恐ろしくて恐ろしくて仕方の無い触手がそこにもっと恐ろしい姿になって存在しているはずなのだけれど、今はそんな事に怖がれるほど、頭の中が正常じゃない。
触手なんかより、自分自身に起こったことのトラウマなんてものより、よっぽど恐ろしいものがそこにはあった。
空に高く浮遊した中也さんは大きな大きな重力子の圧縮エネルギーを爆発したラヴクラフトさんに投げつけて、それと共に眩しい光が辺り一帯を迸った。
思わず目を瞑ればすぐに一段と激しい風圧が身体を圧迫し、暫くしてそれがやんで、沈黙が辺りに流れ始める。
怖いくらいの静けさに目を開くと、ラヴクラフトさんはそこにはもういなくて……まだ汚濁を象徴する体の痣の消えていない中也さんが、口を怪しく横に引いて笑っていた。
それからまたすぐに重力子を使って、今度は無差別に辺りの地面を攻撃し始める。
それにようやく今、私を最も恐ろしくさせているものを認識し、すぐさま再び立ち上がった。
足も腕も震えてるけれど、だけど周りに何故だか太宰さんが見当たらない。
汚濁を中也さんが使用しているはずなのに、そのストッパーとなる太宰さんが、どこを見渡しても見当たらないのだ。
太宰さんがいたとしても恐ろしいのに、彼がいないんなら……中也さんが、本当に死んでしまう。
汚濁のせいで暴走して、身体が持たずに死んでしまう。
中也さんが…私の大好きな中也さんが、本当の本当に死んでしまう。
『………っ…』
太宰さんを探す暇もそんな余裕も無くて、考えなしに瞬間移動で中也さんの前に入り込む。
そして彼の頬に手を当て、血液の事も忘れてキスをした。
すると中也さんがピタリと止まって、手を下ろす。
そして次の瞬間
『____…ちゅ、やさ……ッ…』
腹部に鋭い痛みが走った。