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第9章 天からの贈り物


ナサニエルさんとは今日が初対面だということだからだろうか、彼は私のこの能力を見るのは初めてらしく、また大きなリアクションをとる。

「戻ってきたら真っ先に暖を取らせるからな」

『もう、今夏ですよ?冬みたいな事言わないでくださいよ』

「…せめて食事は体を温めるものにしておこう。それならいいか」

フランシスさんの心遣いに感謝してはい、と頷き、扉を開く。
そして今度こそ行ってきますをしてから、ジョンさん達のいるであろう山小屋の周りの林の中へと足を踏み入れた……はずだった。

扉を消してから辺りを確認するも、人の気配が全然しない。
どころか地面が大きく抉り取られていて、林の木々が広範囲に渡って地面と共に抉り取られ、でこぼことした更地と化していた。

こんな事が出来る人を私はたった一人しか知らないため、だいたい何があったのか予想は着いたのだけれど…それにしてもおかしい。

疲れてそんな事起こりっこないはずなのに、何故か嫌な予感が拭えなくて、動悸がうるさく聴こえる。

とにかく、何かが本当におかしいのだ…何がとは言いきれないのだけれど、とてつもなく大きな力がすぐそこに渦巻いているような気がして。

山小屋の方向に振り向いた瞬間に、辺りにまた、地面を抉りとったような轟音が響き渡った。
耳を劈くような轟音…………そして振動。
ビリビリと皮膚を刺激するそれが静まれば今度は物凄い風圧が襲いかかってきて、思わずそれに膝をつく。

『…うそだよね?……そんな事、ないよね…?』

いくら今疲弊しているとはいえ、私に膝をつかせるようなこの力…自身の身体で感じ取るこの得体の知れない力を、私は嫌なくらいに知っている。

轟音が何度も絶えず響き渡る方向に、風圧や空気の振動が強くなるその方向に、無我夢中になって走り出す。

走って走って、自分の頭の中に思い浮かんでしまった事態になっていない事を祈りながら、少し開けた場所に……壊れた山小屋と、大きな大きな怪物のいるそこに、顔を覗かせた。

否、覗かせてしまった…見てしまった。

『____何、してるの……っ…?』

大きな大きな怪物に、単身で立ち向かい攻撃する、人よりも少し小さくて、けれども大きなその背中。
私に触れる時にしか外さないようにしていたはずの手袋を外して、“それ”を確信させる赤黒い紋様を身体に浮かび上がらせて、中也さんはそこにいた。
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