第9章 天からの贈り物
ヘラリとトウェインさんに笑いかけると、泣きそうな顔をされる。
そりゃあそれだけ時間かかってたら心配させちゃうか…せめて深手の傷があんなに全身に散らばってなければ、もう少し早く出来たと思うけど。
『処置が終わってからちょっとゆっくりしてたらだいぶ疲れも取れてきたし、三人の顔見て元気出た…マーガレットさんの外傷と筋はすぐに全部治ってると思うんですけど、骨は流石に細胞少しだと数日まだかかるんで、まだ固定具を付けたままにしておいて下さい』
「数日で治るだなんてだけでも驚くべき事だ……本当に有難うございます、どうお礼をしたらいいのか…っ」
『え、お礼だとかそんなっ!いいですよ!?』
私に向かってナサニエルさんが深く頭を下げたため、急いで上げてもらうよう説得しようとした。
しかしその瞬間、何かが擦れる音が耳を掠める。
それは確かに寝台の方から聴こえてきたもので、私を含めて四人とも、揃って寝台の方に顔を向けた。
すると先程治したばかりの左腕が、弱々しく、しかしちゃんと意思を持って、動いている。
それを見てすぐさまナサニエルさんはマーガレットさんの寝台に近づき、顔を覗き込む。
「マーガレット…?」
「____……ッ、?…………こ、こは…」
マーガレットさんのものと思わしき声が部屋にこだまして、トウェインさんもフランシスさんも、意識が戻ったのをドクターに知らせ、マーガレットさんの様子を慎重に観察する。
『…後は皆さんでお願いします、私は言っても知らない人ですから……あれからそれだけ時間が経ってたんならいい位になってるでしょうし、前線の方に行ってきますね』
言ってから静かに椅子から立ち上がると、トウェインさんにパシ、と腕を掴まれる。
何?と首を傾げるも、トウェインさんの顔を見たら何が言いたいのかだいたい察しがついて、困ったように微笑むことしか出来なかった。
「本当に行けるの?まだ体温すらまともに戻ってないように見えるんだけど」
『うん、行ける。ほら、言っても私、移動させる役割しかないし戦うわけじゃないから…有難う、心配してくれて』
「!まさかお礼を言われるだなんて…戻ってこれそうになかったらすぐにジョン君か誰かに言って連絡するんだよ?本当に無理しないで」
『はい…じゃあ、行ってきますね』
まだ思う所のありそうな二人の前で、白い扉を創り出した。