第9章 天からの贈り物
安心する香りに包まれてからどれ位経っていたのだろうか。
時間の感覚も分からなくなるほどに頭が働かなかった私の頭を反応させたのは、突如明るくなった部屋の電灯だった。
『!…あ、れっ?なんで……』
ゆっくりと上体を起こせば、足音が響く。
その方向に顔を向けると、フランシスさんとトウェインさんがこちらに向かって駆け足で入ってきた。
二人の後ろから入ってきたナサニエルさんはすみません、と困ったような顔をされ、私も状況がよく分からない。
呆然としていればトウェインさんに両肩を掴まれて、私の目線に合わせるように彼はしゃがみ込む。
「時間かかりすぎてるから心配して来てみたら…!またそんな顔色悪くして、っ」
『時間は…かけなきゃ私、怪我しちゃう。怪我したら怒られちゃうから』
「それでも結局無茶してるじゃないか…身体冷たくなってるよ、寒い?」
肩から手を離したかと思えば中也さんの外套を私の身体にしっかりと密着させるように軽く引っ張り、本当に心配そうな表情で見つめられる。
『冷た…?熱かったはず……?』
首をコテンと傾げていると、フランシスさんが口を開いた。
「上手く身体が機能していない、相当疲れさせてしまったようだな…まあこんなに時間もかかるわけだ」
『!時間って…どれくらいかかってました?』
「どれくらいって、感覚なかったの…?もう蝶ちゃん、ここに四時間半はこもってたんだよ」
告げられた時間に、自分でも何も考えられなくなった。
恐らく処置を終えてから少し休憩してたから余計にだろうけれど、それでもそんなにここにいただなんて。
『……そ、っか。私の腕も落ちたなぁ…ちゃんと訓練してないからこんな事に』
苦笑いになると、マーガレットさんの身体を確認したのか、トウェインさんもフランシスさんも…そしてやはりナサニエルさんも、目を見開いてこちらを見る。
声にもならないような声が響いて、それでちゃんと、他の人から見てもしっかり治っているのだなと理解した。
「これは…いったいどうしたんだ?まさかここまで綺麗に治る…というか無くなるとは思っていなかったんだが」
『ほら、私の身体の細胞って、すぐに傷塞いじゃいますから…怪我したところにそれぞれの場所の細胞を、ちょっとずつ移植しただけです』
「……疲労以外には?」
『大丈夫、何ともない。無茶はしてないよ』