第9章 天からの贈り物
マーガレットさんの元に連れて行ってくれと言えば、何をするつもりだとナサニエルさんに警戒される。
そしてそれとはまた別の意味で、また私が無茶なことをするんじゃないか、無理をするのではないのかとフランシスさんもトウェインさんも眉を潜める。
『大丈夫です、危険な事は何もしませんし、血も流しません…ただ、女の人の身体に傷を遺したく無いだけです。お願いします、連れて行って下さい』
頭を下げてナサニエルさんにお願いする。
私はマーガレットさんのことを何も知らないけれど、身体に傷があるという事は、女性にとって、ものによってはトラウマにさえなり得てしまうものだから。
「か、彼女は一体何を…!?」
「……血は、流さないんだな?君が怪我をするわけでは、ないんだな?」
フランシスさんの声にはい、と答えると、頭を上げるんだと言われ、それに従って頭を上げた。
「ナサニエル君、彼女には何か考えがあるらしい…何も、心配はいらない。この子はただただ優しい子だよ、危険は無い」
「ちょっ、ボス!?蝶ちゃんどう考えても能力使うつもりじゃ…っ」
「血も流さず怪我も負わないと約束したからな。大丈夫だ…ナサニエル君、命令だ。彼女をマーガレット君の元に」
きっと何か力を貸してくれるさ、とフランシスさんが言い切ってくれ、渋々ながらもナサニエルさんは同意してくださる。
ありがとうございますと言ってから、しかしここで、これからの私の仕事の事を思い出した。
『!ふ、フランシスさん……その、お仕事の方は…』
「大丈夫だ、移動するくらいの事、最悪待たせたって誰も文句は言わないさ」
『…出来るだけすぐに終わらせて現場に向かいます』
ペコリと一礼してからナサニエルさんの元へ行き、案内して下さいと一言言えば、こちらですと前を進んでいく。
ナサニエルさんの少し速い速度と大きい歩幅について行くよう小走りになって後ろをついて行き、フランシスさんの執務室から退室した。
ナサニエルさんに案内されて到着したのは医務室の更に奥深く…集中治療室だった。
そこには全身を包帯で包み、固定具で固定して痛々しい姿のまま眠る女性が横になっている。
『この人がマーガレットさんですね。詳しいカルテはありますか?どこをどう負傷されたのかの詳細が記されてるものが欲しいのですが』
「…いったい何の為にそのような物を?」