第2章 暗闇の中で
室内の電気を消して、一緒に布団に入って……くっついてもいいかと聞いていた割には離れている蝶。
まだ怒っているのだろうか。
しかしそれを考えると、中原の思考回路が迷走し始めた。
ある程度の体術も身についているのに、細かった手足…割れてはおらず、綺麗に女の子らしさを保っている腹部。
そしてあの首筋から鎖骨までの繋がりに……女性らしい胸部。
「……って、寝れるかあああ!!!」
『!?』
「あ、ああすまん……いや、くっつくっつってたから、いつ来るのかと思っててな、はは」
隣で思いっきり体をビクつかせた蝶をなんとか誤魔化して話題を振る。
『…恥ずかし、くて……その、』
何故言い出しっぺのお前がもじもじしている。
いや、そんなに恥ずかしがられたらこっちだって変に意識しちまうだろうが。
落ち着け俺、相手は中学生で俺は成人済みだ、ただのロリコ……犯罪者になるぞ!
「そ、そう…か。でもさっきまであんだけくっついてたんだし、今更そこまで恥ずかしがる事か?」
『………中也さんは、恥ずかしくない?ドキドキしない?』
こちらに寝返りをうって見つめながら問う蝶。
「恥ずかしさ…はなんとか慣れてきてるって感じだな、」
『そ、ですか…』
ドキドキとやらに関しては誤魔化した。
バレバレだろうか。
しかしすぐに俺はそのドキドキとやらを味わうこととなる。
いや、今でも十分変に緊張はしているんだが。
「ん、…蝶?」
腕枕、とだけ言われたのでそれに従ってそうしたところ、暫く経つとすぐに蝶は寝てしまったようだ。
かなり小さい声だったが、これだけ周りが静かだと呟きくらいなら全然聞き取れる。
まあこの腕枕のせいで緊張しちまってる俺は、集中してなきゃ聞こえにくい状態ではあるんだが。
『……ちゅ、やさ………』
寝言か何かで俺を呼ぶ蝶。
前髪を指でかき分けてやり、蝶の言葉に集中する。
こんなにも、一人の少女に対してドキドキする事が今までにあっただろうか。
蝶はこんな心境でさっきまで過ごしていたのだろうか。
『こども、じゃない……よ、………』
蝶の一言で、ドキドキとしていた鼓動が、今度はドクン、ドクンと大きく深い波へと変わる。
「子供じゃないって、まさかさっきの…」
少し考え、二回目となるおでこへの口付けを落とした。
「お前はまだ、子供のままでいいんだよ」