第2章 暗闇の中で
『ち、ちち中也さん!ちょっと私は用事があるので、もう少ししてからでも…』
「何言ってんだよ?後寝るだけじゃねえか、準備だって綺麗に終わってるみたいだし…何してんだ?そんなとこで蹲って」
ああもう、なんでそういうとこでだけカンが鋭いのこの人は!?
今着替え中なので出て行って下さいだなんて言えるわけないでしょうがああ!!!
『ぅえ!?いや、何でもないですよ、あはは…』
「でもずっと蹲ってんじゃねえか…どっか打ったか?」
更に近寄ってくる中也さん。
あ、ダメだこれ、絶対見られる!!
白石 蝶、絶体絶命のピンチです!!
『打ってません!何ともないので近づかないでください!!』
「えっ…」
やってしまったと思って中也さんの方を向くと、固まっていた。
『あ、いや今のは違くてその…』
「そ、そうか、違うんならいいんだ。ほら、見せてみろ。どっか痛むんだろ?」
よくなああああい!!!
どっちかっていうと今は頭がとっても痛みますよ!貴方のおかげで!!
いつの間にか隣にまで来ていた中也さんに片腕を掴まれる。
『やっ!?あ、あの中也さん、本当に大丈夫だからっっ』
抵抗するも、男の人…くらいならともかく、相手はあの中也さんだ。
力で勝てるわけもなく、呆気なく持ち上げられる左腕。
「大丈夫だったら、いつもならお前はすぐこっちに来るんだ……よ、…………?」
そして、勢いよく持ち上げられた左腕と擦れて、摩擦で更にはだけた羽織っただけの浴衣。
幸い下着は着ているからいいものの、こんな羞恥に耐えられるわけがない。
『や、中也さん!腕、!!』
「え、ええ!?す、すまん!!!」
暫くフリーズしていた中也さんだったがようやく状況が分かったらしく、戸の方を向いてくれた。
『あああああ、だから来ないでって言ったのにいいい!!!』
急いで浴衣を着ようとするも、焦って帯が上手く巻けない。
結局、私が浴衣の襟元を抑えて、中也さんが結んでくれた。
体育座りで再びむくれる私。
今回ばかりはいくら中也さん相手でもかなりこたえるものがあった。
中也さんはちょこんと正座してずっと焦って謝罪している。
ただし顔はかなり赤い。
『…恥ずかしかった』
「す、すんませんっした」
『………今日、寝るときにいっぱいくっついていいなら許します』
「そ、それで機嫌をなおしてくれんなら」