第1章 蝶と白
「もしもし、国木田だ。すまないな、学校なのに。」
律儀だなぁ…そしてその性格故に太宰さんからおもちゃにされて……苦労してるなぁ。
『いえ、国木田さんから連絡だなんてよっぽどの事態だと思いますけど…どうされたんですか?』
すると、国木田さんは、数日前に探偵社に入社した、中島さんこと中島敦さんのことを話しだした。
「ああ、小僧のことなんだが。今、初仕事で谷崎兄妹と一緒に外へ行かせているんだが、さっき太宰が、突然飛び出して行ったんだ。」
『太宰さん、ですか。また入水にでも行ったんじゃ…』
「それが、行き先も告げなかった挙句、途中で見失ってしまった…くそ!あの唐変木め!」
電話の相手は酷く焦っているようだ。
それ程の事態なのだろう。
『国木田さん!何があったのか教えてください。』
「あ、ああすまん、それが……」
国木田さんの言葉で、私の脳裏にある事が思い浮かんだ。
中島さんたちがピンチだというのにも関わらず不謹慎だろう。
しかし、私にとってはそれほどまでに効果を持つ言葉だったのだ。
「小僧達が今、ポートマフィアの芥川と交戦しているらしいんだ」
ポートマフィア…今、太宰さんはその現場に向かってる。芥川さんがいる。
つまり、太宰さんの元へ行きさえすれば芥川さんと接触出来る。ポートマフィアの人間と…!
『っ…分かりました。すぐに向かいます。太宰さんのとこに飛べばいいですよね?』
「ああ、頼む!」
そこで、電話を切った。
……私、本当に最低だ。何でちょっと喜んでるんだよ。
何で、心配するよりも先に、ちょっと嬉しくなっちゃってるんだよ。
『………とりあえず、太宰さんのとこに飛ぼう。』
手を前に出して扉を創る。
赤羽君は驚いて様子だ。
『…ついてきてみる?赤羽君。私の住んでる世界に。』
「なんだぁ、やっぱバレてたんだ。…行くよ。」
『じゃ、ちょっと我慢してね?』
「……え?ちょっと!!?」
私よりも大分背が高い赤羽君を担いで扉の中を見ると、空中だった。下を見ると、横浜の建物が沢山並んでいる。そして、太宰さんを発見。
『それ……!!』
私は、そのまま扉の中に飛び降りて、赤羽君を担いだままテレポートを数回繰り返して太宰さんの元にたどり着く。
「異能力、人間失格」
赤羽君を降ろして芥川さんと直面したのは、丁度戦いが終わる時だった。