第1章 蝶と白
突然の私の登場に、一番驚いてるのは太宰さんだ。
「え、蝶ちゃん!?どうしてここに、」
『国木田さんから連絡があったので。』
すると、羅生門を封じられた芥川さんと、傍らにいる女性が私の存在に気づいた。
赤羽君は物陰に隠れてもらってるから、気づかれていない。
『…あ、ゴム切れちゃった。』
髪を上で束ねていたゴムが切れ、髪がおりる。
それにより、芥川さんの表情がさらに驚きの色に染まった。
「其方、もしやとは思うが……白石か?」
振り返って見てみる。
芥川さん、覚えててくれたの…?
『そう、私だよ、芥川さん!私、いっぱい聞きたいことがあるの!』
監視役として活動していた太宰さんは、大人しく私に喋らせてくれてる。
この人の優しさには感謝しなくちゃいけないな。
「僕こそだ…現在、ポートマフィアでは、其方は行方不明。若しくは……死亡した事になっている。」
やっぱり、そんな事になってたんだ。
『…私生きてるの。太宰さんの尽力もあって、今は探偵社にお世話になってる。芥川さんに、一つお願いしてもいいですか?』
「僕の出来ることならば、協力しよう。」
声にしようとするけど、いざ本当に伝えるとなると、怖くて震えが止まらない。
でも、これで希望が見える気がするのも事実。
言っちゃえ…言え……っ
『あ、あの人に……私、生きてるよって。…待ってるよ、って伝えて、下さい………………中也さんに!!』
発した声は、何とも言えないほど情けなく震えてた。
「了解した。…太宰さん、ここは貴方…それと白石に免じて退きましょう。しかし、次は確実に人虎を捕らえます。」
「そうかい……絶対中也に伝えてくれよ。出来るだけすぐにだ。」
「分かってます。」
芥川さんと女の人は、素早く去っていった。
そして赤羽君が出てくる。
「おや、君は確か……蝶ちゃんのクラスの子だね?」
驚いた。太宰さんもクラスの皆を覚えてたのか。
「うん。ほら、一人くらい知っといた方が、何かあった時役に立てるし。」
「成程。さっき聞いてたから分かるかもしれないが、蝶ちゃんは武装探偵社の一員だ。ちゃんと能力だってある。君達と関わりたがらなかっただろうが、それは「そっちの事情に巻き込まないため。」そうそう。」
二人の会話を聞いてるけど、良かった。何だか太宰さんと気が合うみたいだね、赤羽君。