第2章 暗闇の中で
『…………見てない、私何も見てない、』
開けっ放しの部屋の戸からは、まさかの男子陣が勢揃い。
更には首領と何人かの構成員までいる始末。
だがそんな事はどうでも…よくはないけど、いい。
問題はこっちに向かってきてる人だ。
何でみんなの前で連れてくるかなぁ!!
「何が見てないのよ、もう気づいてんでしょうが」
『やだ!絶対変なの、見せられる訳ないじゃないですか!』
体育座りで顔を伏せ、ボールのように丸くなって小さいながらも抵抗する。
だって仕方ないでしょう?
クラスメイトに先生、マフィアまで集めて、目の前に中也さんを連れてくるだなんて恥ずかしい以外の何でもない。
「何が変なんだよ、他の誰でもねえ俺がお前に似合うと思って選んだもんだぞ。変になってる訳がねえ…」
『中也さん!?後で見せますから今はっ』
垂れる髪を片耳に掛けられ、近くで聞こえるあの声に身体が反応する。
ダメだ、熱さが増してきた。
「俺は今見たい」
「「せーのッ」」
ドンッと片岡さんと原さんに押されて、すぐそこにしゃがみこんでいた中也さんに倒れ込む。
『わわわ!?いきなり何…して、……〜〜〜っっ』
思わず顔を上げてしまい、至近距離にあった中也さんの顔。
直視出来なくて反射的に中也さんの胸に顔を埋めた。
周りからはおおお〜〜!!なんて歓声が上がる始末。
今騒いだ奴覚えときなさいよ。
「…似合ってる。もっとよく見たいから顔、上げろ」
『変、じゃないです?』
「ああ、……可愛い、から、」
今の言葉は歓声に紛れて、本物だったか分からない。
でも確かにそう聞こえた。
私がばっと顔を上げると、今度は中也さんの方が恥ずかしそうにしている。
かなりレアな中也さんからの可愛いという言葉に口を緩めるも、少し前の出来事を思い出して冷静になった。
『中也さん…………可愛い女の子二人につられてこっち、来ちゃったんですね?手繋いで、可愛い顔と誘い文句に連れられて、女子部屋にまで来るのを断れなかったんですね!!?』
中也さんをしっかり見ながら、思い出した。
カエデちゃんと奥田ちゃんにデレデレしてこっちに来たんじゃないか。
「い、いやそれはだな、お前が」
『私が何ですか!私なんてまだ久しぶりに会ってから、手繋いでなかったのに!!』
え、そこですか!!?と周りの野次たちは心の中で突っ込んだ。