第2章 暗闇の中で
『あ、ああああそれは違くてあの!!』
「まあまあそんな慌てんでも、ほら、返す返す~」
中村さんに服を返され、恥ずかしさに蹲っていると、イリーナ先生まで混ざった皆が怪しい目でこちらを見ていた。
『あの〜…皆、?』
「うん、その服どうしたの〜?旅館は浴衣あるし、部屋着なんて持ってるって事はー……誰かからもらった?」
うふっと言いながら可愛らしく聞いてくる倉橋さん。
その言葉だけでも恥ずかしい、顔が熱い。
ワンピース丈の中也さんセレクションの服に顔を埋めながら、聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声を絞り出した。
『そ、れは……中也さん、から…っ』
「中也さん??」
暫しの沈黙。
「「「……えええええ!!!!」」」
「き、着よう!今すぐ着ようそれは!!そして見せに行かなきゃ!」
と矢田さん。
『う、うん…そのつもりで更衣場所探してた、……の、!!?』
「ひゅ~!やっぱ可愛い子はええね〜!」
中年男性の様なノリで私の浴衣の帯を取ってしまった中村さん。
『ちょ、中村さん!何してっ…』
「早く着ないと〜……残りも脱がすよ♡」
なんて恐ろしい、首領の化身みたいだこの子
『わ、分かった、分かったからっ!』
『…こ、れでいい……デスカ、』
半泣き状態になりながらも、ちゃんと着た。
着たんだよ、もうここから出てってもいいかな。
「何でそんな丸まって小さくなってんのよ!…ほら、あんた中学生の割にかなり胸もあるんだからもっと強調しなさいって!」
「そうだよ、それに髪もちゃんと後ろ側に下ろさないと、折角それ着てるのに勿体ないよ!」
イリーナ先生と不破さんにあちこち軽く弄られて、もう死にそうなくらいに恥ずかしい。
少しむくれて、いじけてますよ感をアピールしながら座り込んでいたら、突然女子部屋の扉が開かれた。
「たっだいま~!連れてきたよ!!」
「割と近くでいてくれて助かりました!」
「わあ、お疲れ様!こっちだよ…ちょっと色々弄ってたからか拗ねちゃったけど、」
そうか、誰か連れてきたんだね。
カエデちゃんと奥田ちゃんが外に出ていたらしく、連れてきた人物をこちらに誘導しているらしい。
どうせ殺せんせーとかカルマ君とか連れてきて冷やかす気だ、なんて思いつつ、向かってくる足音の方にちらりと目を向けた。