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第9章 天からの贈り物


『それでやっとはっきり気づいたの、中也さんの幸せは私が憧れてるものじゃないって。私が欲しいものは、中也さんが求めてるものなんかじゃないんだって』

「……ちゃんと、聞いた?何か他にも言ってなかった?それなら僕はあの男に失望するけど、僕には到底あの男がそんな人間には思えない」

中也さんから言われた言葉なんて勿論全部、覚えてる。

『私と一緒にいるのがいいんだって。やっぱり私に縛り付けてるの…だから早く離れてちゃんと普通に幸せになってもらわなくちゃって思ってたのに……あの人、私に卵子が無いって聞いた時に、眉一つ動かさずに私の事を見てたのよ?それどころか、自分を責めるような顔までして』

あの顔は何回か見たことがあった。
やってしまったというような、こんなはずでは、というような、驚きでも侮蔑でもない、自分自身を責めるようなあの目。

『なんで中也さんが自分の事を責めるのか分からないし、責めて欲しくなんてなかった…っ、せめて普通の反応をして欲しかったの、驚いてくれるくらいでよかったの……』

「驚かなかったっていうのは確かにびっくりだね…けど蝶ちゃん、僕気になったんだけどさ?あの人、君の事をどれだけ知ってるんだろうね?」

トウェインさんの妙な発言にどういう事?と聞き返す。

「いや、僕より詳しいってのは目に見えて分かってるんだけどさ?蝶ちゃんの身体のこと…もし、元から全部知ってた上で今まで一緒にいたんなら、驚かないってのも納得だなって」

『元から…全部?あの人が私を拾ったの、十四の時だよ?…私の身体に関するデータなんか、実験の記録くらいしか……ッ、まさかあれを…?』

頭が段々と混乱し始めた。
いや、そんなはずはない。
あんなものは常人が見られる程生易しい内容じゃないし、見たとしたってすぐに気分を悪くするようなもの。

読むだけでも軽く忘れられない悪夢になり得るようなものばかりなのに。

『そんな、わけないよ…だって今まで何も聞いてこられなかったし。私が怖いと思うことだって何一つ……全、然…』

「…あの人、怖いくらいに…ていうか馬鹿みたいに蝶ちゃんの事大好きじゃん?普通恋人でもあんな風にまでなれないと思うんだけど…蝶ちゃんが怖いと思うような事、何一つされた事なかったんでしょ?」

そうだ、何も無かった。
何一つとして無かった…そこがそもそも、おかしかった。
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