第9章 天からの贈り物
組合の食事の量が量なだけに医務室に運ぶ事は困難で、結局フラフラしてると危ないからと車椅子に座らされた。
『……能力使えば飛べたのに』
「病人は文句言わないの、ていうか自業自得なんだから言うこと聞きなさい」
『………私の主食は甘いものだもの』
「はいはい、じゃあその偏食治さなくちゃね。はい、着いたよ」
上級構成員の食堂に連れてこられて、そこにはたっぷりの食事が用意されていた。
そこには誰もまだ来ていなかったようで、トウェインさんと二人で食べてきなよとジョンさんに気を遣われ、結局二人で食べる事に。
『別に私一人でよかったのに』
「それで食べてくれなかったら大変でしょ。ちゃんと食べるの見てるからね僕」
『……視線がうるさい』
「もううるさくてもいいよ!!ほら食べよう食べよう!」
用意された料理はどれも美味しそうなものばかり。
それを少しずつ手元の取り皿に取り分けて、私用にか用意されている箸を使って一口分だけ摘む。
そしてそれを口に入れようと、口を近づけて開いた…のだけれど。
『…ッ、……』
「!……蝶ちゃん?」
ガチャ、と箸を下ろしてしまった。
まただ、今ここにトウェインさんしかいないから、隠してきてたのに箸まで下ろしちゃった。
どうしようもない気持ち悪さが渦巻いて左手で口元を押さえ、もう手遅れなのに冷静を装って息を整えさせようとする。
「…今日、中原中也とは会ったんだろう?何があったの」
『!……色々、あって。誰か好きな女の人でも出来たら、私に構わずちゃんと言ってくれって…邪魔にならないように離れるからって言ったら、怒られちゃった』
ポツポツと言っていけば、言ったの!?と驚かれる。
コクリと頷いて、卵子が無いところまで言い切ってきたのだと説明した。
「そ、それで何か言われた?あの男に限って、君に酷いことを言ったりはしないはずだけど…」
『……吃驚もしてなかったの。それどころか、自分は結婚願望も子供が欲しいとも思ってないって…名前を伏せて好きで結婚なんてしたいって思うような人がいるって言ったのに、驚きもせずにすればいいじゃないかって』
ちょっとぐらい、驚いてくれるってどこかで期待してた。
そんな事をするんじゃないって、何処にも嫁になんか行くんじゃないって。
俺以外の奴のものになんか、なるんじゃないって。
