第9章 天からの贈り物
「な、ッ何が起こって…」
混ぜていたガラス棒が凝固し始めた血液に絡みついて、そのまま血液で固められてしまったのだ。
「血液凝固…?いや、それにしては硬すぎないかいこれは…固まったセメントみたいにガチガチだよ」
ジョンさんの言葉にまた色々と思い出して、トウェインさんの腰に腕を回す。
「……成程、こりゃあ輸血なんか出来っこないわけだわ」
「トウェイン、君は何か知らなかったのかい」
「僕が知ってたのは蝶ちゃんの傷が治る体質くらいさ。まさか血液にまでこんな事があるなんて思いもしなかったんだけど……蝶ちゃん、嫌な事聞くけど、これをされると死んじゃうんだね?」
返事も肯定も出来なかった。
しかし否定も出来ずにただただトウェインさんにしがみついて怯える私を見て、この無言が肯定であると認識してくれたらしい。
「輸血が人命のためにならないだなんて…悪い事を言ってしまったらしいね。しかし君、血が足りなくなった時なんて、ポートマフィアや探偵社に所属していたなら一度くらいはあったろう?そんな時はどうしていたんだい」
ジョンさんの質問に、何とか喉を震わして、声を絞り出した。
『一人だけ…、固まらない人が、いるから…』
言った途端に誰の事なのかを察したのか、ドクターまでもが反応を見せる。
「あああもう、ここでもあの男か…てか何!?あの男もBだったの!?しょうもないけどなんか複雑!!」
『組織の全員の血と試してもらったの…あの人の血じゃないと私ッ……本当に死んじゃう、からっ…』
白石蝶が、死んでしまう。
折角あの人のおかげで生まれることが出来た白石蝶が、死んでしまう。
「ドクター、今の状態って輸血しなくても大丈夫そう?他に…出来れば医療器具を使わないで何か対処法があれば……」
「とりあえず鉄分のサプリを飲んでみて、あとはしっかり食事を摂らせよう。それでも症状がよくならないようなら…その人の元に行ったほうがいいだろうね」
『!!!…ダメ、ッ、もう会えない、からっ……』
私の態度を不審に思ったトウェインさんに、ジョンさんが色々とあったらしいよと一言言ってくれる。
「……ご飯ろくに食べてなかったとか初耳なんだけど。僕、今ちょっと怒ってるよ?…ドクター、サプリ頂戴。今からご飯と一緒に摂ってもらうから」
怒ってる、なんて言ってるトウェインさんの手は優しかった。
