第9章 天からの贈り物
中也さんの外套に身をくるんで、私を助けようとしてくれている人達に怯えたような目を向ける。
「輸血をするなと…何かあるんだな、それで血液を調べろと……トウェイン君が確かBだったろう、彼の血液をサンプルに使おう。呼んできてくれ」
はい、とジョンさんは駆け出していってしまった。
「君の血液も採取させてもらうということでいいんだな?」
コクリとなんとか頷いて、しかし腕を出すのが怖くて、ナイフを貸してくれと頼む。
「しかし君、採血をすれば済む話だろう。わざわざ傷を作らなくても…!?机のカッターが……ッ」
『大丈夫です、とりあえず血液を採取する用の容器…はこれを使わせていただきます』
寝転んだまま目に付くところにあったカッターナイフとビーカーを手元に移動させて、カッターの刃を出していく。
「き、君!何を…!!」
『…ッ、ぁあッッ……〜〜〜!!!!』
手の甲を少し深めに切りつけて、そこからすぐに刃を離し、滴り落ちる血液を一滴も逃さずビーカーに入れる。
刃物も注射器も恐ろしい、けど人からされるだなんてもっともっと恐ろしい。
それなら、一思いに自分でやった方が全然マシだ。
「ただでさえ貧血の身なのにそんな無茶を…ッとりあえず傷口を見せなさい!すぐに止血……を…………!?」
痛みの残る手の手首を思いっきり自分で圧迫していると、そこを見たドクターがまたもや目を見開いて驚いていた。
「ちょっ、さっきの声は!?」
「蝶ちゃんいったい何して……!!!」
トウェインさんの声が聞こえて、痛みに意識を持っていかれそうになったのを耐えていると、ドクターがトウェインさんの方を向いて口を開く。
「これは、どういう事だ?…さっき、確かにこの子は自分で手を切りつけたはずだ……それがどうして、もう傷口が無くなっている?」
ドクターの言葉にジョンさんもわけがわからないといった顔をして、トウェインさんが走って私の元に来てしゃがみ込み、私の手とビーカーに触れた。
「何、してんのさッ…こんな方法じゃなくってもいいだろう!?なんで自分を大事にしない!?なんでっ…、なんで痛い思いをして……」
『注射、されるよりよっぽどいい…ッ、人にされるより、全然……いいッ!!』
トウェインさんを見てどこか安心して、本音が漏れ出した。
「!!ドクター、これ今どういう状況なの?詳しく教えて」