第9章 天からの贈り物
「とりあえず椅子持ってきてたから座って楽にしてて。風邪?熱…では無さそうだけど、体調悪いんなら先にそう言ってくれれば……」
『体調悪いというか判断ミスというか、自業自得というか…あはは、大丈夫ですよ。ただの軽い貧血ですから』
貧血?と眉を潜めるジョンさんに促されるまま椅子に腰掛け、グッタリと背もたれに凭れ掛かる。
『はい、最近甘いものばっかり食べてて鉄分摂ってなさすぎて。私人より鉄分多く摂らなきゃなんですけどね』
でもまだ軽い方なんで大丈夫ですと言うのに、ジョンさんの表情は相変わらずだ。
「軽い方も何も貧血は貧血でしょ…まだ輸血まではいかなくとも大丈夫そうかい?なんならドクターを呼んで君と同じ血液型の血液を…」
『や、やめて!!!それは…ッ、輸血だけはしないでっ!!』
言われた瞬間にドクリと心臓が脈打って、目を見開いてジョンさんの腕を掴む。
「け、けど君、軽いって言っても相当しんどそうだし」
『お願いッ!!!私に輸血はしないでッ…、あんなのもうっ…!!』
「輸血でどうしてそんなに怖がる必要があるんだ、人命優先だろう普通。注射が怖いんならそれはそれで我慢すれば楽になれ…本当に顔色悪いよ君」
身体に植え付けられたあの感覚。
全身の血液が凝固して、もがく事しか出来ずに命が終わる…思い出しただけでも身体の震えが止まらない。
『わ、私の輸血の話なら調べてもらえば分かります、からっ…』
「……とても言えそうな状態じゃあないね。分かった、それならとりあえずドクターの所にだけ連れて行ってはくれないか?ここの事なら最悪部下に連絡してもらう事も出来るから」
頷くことも出来ずに中也さんの外套をガタガタと握りしめ、ゆっくりと白色の扉を創り出した。
ジョンさんは構成員の人に少し抜けるから何かあれば連絡してくれと言葉を残して、私を支えるように立たせる。
「歩けるかい」
コク、と頷いて外套の内側からジョンさんの腕を掴んで、自身の中に蘇る恐怖になんとか耐える。
扉を開いてみるとそこは医務室に繋がっており、以前お会いしたドクターがいて、酷く驚いた表情をされた。
「ドクター、この子の血液をちょっと調べてほしいんだけど」
「顔色が悪い、すぐにベッドに寝かせてあげなさい。君、血液型は?」
『B………お願い…ゆ、けつは…しない、でっ?』