第9章 天からの贈り物
『まあそれも確かにあったんでしょうけど、なんせ昔から親馬鹿な人で』
「親馬鹿…あの外見と性格や口調からは想像もつかないものだね」
『会ったことあるんですか?びっくりするくらい過保護なんです…私に殺しをやめさせたそもそもの理由も、ふとした私の呟きを聞いたせいだって言いますし』
呟き?
首を傾げるジョンさんに、はい、と続ける。
『詳しいところはあんまり聞かないで欲しいんですけど、小さい頃に二人で過ごしてて、たまにやっぱり街中に出たりするんですよね。それで色んな人達とすれ違ってってしてるうちに…ずっと考えないようにしてたのに、つい普通になりたいって、いいなぁって言っちゃったんです』
「普通に…というと?」
『今はちょっと違う意味なんですけど、簡単に言えば、人からの愛情なんてものに飢えてたんです。もっと笑い合いたい、素直に接したい、甘えたいって』
あの時私がポツリと漏らしていなければ、まだ私はポートマフィアの構成員のままで殺しを続けていたのだろうか。
首領や他の皆なんかとは違って、この街を護りたいからだとか、大切な家族がいるからとかいう理由なんてこれっぽっちもなかったまんまの私が。
でもそこまで考えて、結局あの人なら止めさせてたかという考えに辿り着く。
どう過ごしていようが、私に初めて怒りを見せたあの日の中也さんは、意地でも私を戦場から引き離すつもりだっただろうから。
「…少し驚いたな。トウェインの話を聞く限りじゃあ、君はあの男とは相当親しいものだと聞いていたんだが」
『今でこそこんな感じですけどね。まあでもそれも、さっき全部終わっちゃったかもしれないですし。本当……何やらかしてきちゃったんだろ、私』
私の呟きは金属を弄る音にかき消されていった。
全てのセッティングを終えてから、ここからどうするんですかとジョンさんに聞けば、後はずっと待機だよと返された。
しかしその言葉に、私は目を丸くする。
『待機って…皆さん暗殺部隊なんてものでもないのに』
「敵が来るのは今日か明日…来るまでは粘るさ。君はもう十分に力を貸してくれたし、なんならこちらから呼ぶまで拠点に戻っていればいい」
『いや、そんなの流石に申し訳ないですし…テントとか宿とか、無いんですか?下手すれば野宿って事ですよね』
野宿だよ?と首を傾げるジョンさんに、溜息を一つ吐いた。