第9章 天からの贈り物
ジョンさんの指示に従って照明器具や固定銃を組み立てていく。
照明器具に関しては設置するのも人力じゃあ大変だし、全て私の能力で終わらせた。
そして固定銃に関しては、能力は一切使わない。
『やっぱり資金力がある分、用意する武器も全然違いますね?』
「君、銃に詳しいのかい?僕はそんなに詳しくないんだけど、こんなのを手作業でセッティングしてるってのに、やけに慣れてるじゃあないか」
『まあ、これでも暗殺部隊なんてやってた時期もありましたし…銃なら一通りのものはちゃんと扱えるようにしてますよ』
刃物はもう懲り懲りなんで使うのやめちゃいましたけど、と言えば、またもやふぅんと返される。
一見興味の無いような返しにも思えるのだけれど、その実色々なことを考え込んでいる顔だ。
「でも君は、こんなものを使わなくとも簡単に人を殺せるだろう?今だって能力が使えるんなら、僕を殺してでも逃げてしまえばいいのに」
『ジョンさんまでそんな事言います?私もう殺しの業界からは足を洗ってるんですけど…今私が殺しをする理由は、何もありませんから』
「今という事は、以前はあったということかい?」
ジョンさんの言う以前というのは、どの段階での話だろうか。
しかし確かに、殺しを続ける理由を持っていた時期もあった。
懐かしい、あの人達は今頃どうしているだろうか…なんて考えるだなんて馬鹿馬鹿しい。
結果なんて知っている、死んでしまっているのだろうから。
『一番現役でやってた時は、仲間を守る為…暗殺部隊なのに、所属していた組織のボスがすっごい平和主義者だから、うちのボスとはいつも相性悪そうでしたけどね』
「守る為?ていうか平和主義者なのに暗殺部隊なんて持ってたのその人」
『ふふっ、半ば強制的にそんな役職に就かされちゃった人なんです。でも強かった…出会った当初なんかはいざこざばっかりでしたけど、最終的には皆をうまくまとめるボスでしたよ』
まあ、かなりおっちょこちょいでしたけど。
そう付け足せば、なんだいそれはと言いながらジョンさんに笑われた。
『その人達と別れてからは、殺しでしか生きる方法が無くて、誇りも何もなしにただただそうしてきたってくらいですかね。結局私を助けてくれた人が、私のやり方を見兼ねてやめさせちゃったんですけど』
「目的の無い殺しほど見ていて醜いものはないからね」