第9章 天からの贈り物
『…どうも』
「!やあ、ちゃんと会話をするのは初めてだね?……自己紹介を改めてしたいところなんだが、どうしたんだい。えらく顔色が悪いじゃあないか」
ラヴクラフトさんはそこには今いないらしく、ジョンさんと何人かの構成員さんたちが山小屋を包囲するように計画を練っているらしかった。
『別に…ちょっと嫌な事を思い出してただけです』
「ふぅん…ちょっとって顔には見えないけど」
『バレちゃいますか?へへ、馬鹿なことしてきちゃったんです私。今のタイミングで言うつもりなんて無かったのに…大好きな人に、自分から遠ざけるような事言ってきちゃいました』
ジョンさんと話したのなんて、正直この間捕まった時が初めてだ。
特に良い印象があるわけでもないのだけれど、笑っていなくちゃ、何かに耐えられなくなるような気がした。
「残念ながら僕はトウェインと違って君の事にさほど詳しくない。だか慰めるような事は出来ないが…君が馬鹿みたいにお人好しだという事はよく聞かされている」
『お人好しはトウェインさんの方ですよ、何言ってるんだか』
「……まあいい。君にこちらの作戦に協力させるつもりも、相手と戦ってもらうつもりもないから、気楽にしていてくれ。後、いくら外套を羽織っていてもここからの時間帯だ、あまり女の子が身体を冷やすものじゃないよ」
言いながらいつから用意してくれていたのか、常温…よりは少しだけ温かめのペットボトルの紅茶が手渡される。
『やっぱり、よっぽど皆さんの方がお人好し…折角私も今動けるんですし、お手伝いくらいはしますよ』
「へえ、君が?小さな女の子に一体何が出来るんだ…か……」
言いきられる前に能力で、そこに運び込まれていたいくつもの巨大な照明器具を組み立てる。
そして一つ完成させて、そこに設置してみせた。
『私、小さいって甘く見られるの嫌いなんです。で、お力お貸ししましょうか?』
「…はは、これは驚いた。じゃあお言葉に甘えさせてもらうとしようかな!だけど大丈夫なのかい?仮にも君の味方の敵組織の作戦を幇助するような事をして」
ジョンさんから放たれた当然といえば当然のその問いに、こちらも当然のようにして返す。
『大丈夫です。皆、強いですから』
「大した子だね」
『私、ただの子供じゃないですよ』
「もう十分に分かったよ。さ、残りの照明器具と武器も頼もうかな」