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第8章 空白の時間


『あ…でも中也さん、好きな女の人でも出来たらちゃんと言ってね?私が邪魔になっちゃいけないから』

言い放った途端に、中也さんも立原もピタリと止まって、私の方に顔を向ける。

「は…?蝶、お前いきなり何言ってんだよ」

「俺に好きな奴が出来て?…お前が、邪魔に……?」

『うん、中也さんは私のだけど、私のにならない方がね?…幸せに、なれるから』

中也さんにガシッと肩を掴まれて、何考えてやがる、と目を合わせられる。

『何にも…考えてなかったから、ここまで甘えてきちゃったの。だから、そろそろ中也さんはいいぐらいの歳になってきたんだし、私なんか程々にしておいてちゃんと“結婚出来る人”でも見つけなきゃ……い、たッ…』

肩に置かれた手に力がこもって、痛いくらいに掴まれる。

「おい、そりゃどういう意味で言ってやがる。俺が誰か他の女とと結婚してえとでも思ってるってのかお前は」

『違ッ…』

何が違うんだ、と更に力が入れられる肩に顔を歪めて声を漏らせば、ハッとして中也さんの手から力が抜ける。
無意識にしてた……相当怒りかけてる。

「悪い…でもなんでいきなりそんな事を言うんだよ。俺はお前の事を邪魔になんか思わねえし、お前以外の誰かと一緒にいようなんざ『それ…』あ?」

『そんな、だから…私に縛り付けてるから、普通の恋愛が出来ないんだよ、中也さん。ちゃんと好きな人見つけて、結婚して、一緒に生活して……籍も入れて、子供も作って、ちゃんと幸せになってくれなくちゃ…っ』

言うな、言うなと中也さんの目から殺気が伝わってくる。
どうしてそんなに怒ってるの?
私は中也さんに、普通の人達みたいに幸せになって欲しいだけなのに。

そろそろ結婚を考えて誰かとお付き合いを始めたって、おかしくないくらいの歳なのに。

「ち、蝶っ?お前が幹部の事大事に思ってんのは分かったけど、お前まだ何か勘違いして…」

『勘違いも何も、私のせいで中也さんの一生を棒に振るわせちゃダメじゃない。私はそれが一番辛いよ…中也さんに誰か好きな人が出来たら、離れなくちゃいけな……ッ、!』

中也さんに外套を掴まれて、身体が強ばる。

「お、前はっ…何でそう……」

『……ッ、だって、普通じゃないじゃない!!こんな身体で、こんな変な存在で!!…中也さんの人生まで無駄にさせたくないよッ、普通に幸せになってよ……!!!』
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