第2章 暗闇の中で
『……それで、半年前に出てこれたんです。今回の実験施設は日本国内でしたし、自業自得で勝手に捕まって勝手に絶望してたけど…そこから、なんとなく中也さんの事は考えないようにしてて、太宰さんの事を思い出して強く考えてたら…』
そう、それは突然だった。
実験中に加えられた何らかの刺激によって発動するようになったのか、身体が成長していたからかは分からないけれど…
『…私の、蝶がいっぱい集まってきて、扉が出てきて……それを開けたら、武装探偵社の事務所に繋がってたんです。』
あの時は中島さんはいなかったっけ。
その場にいた人みんなが驚いて、何事だって怪しい目でこっちを見てたけど、蝶ちゃん?と私を呼ぶ声が聞こえた。
声の主を見ると、随分と雰囲気の変わった太宰さんがそこにいた。
そこまで説明して、勿論感極まって太宰さんに抱きついてしまったのだが、そこは説明しなかった。
『という訳です、まあほら…中也さんに出会う前の元の生活に戻っただけでしたし。それに私、これでいつでも中也さんのところに飛んで行けるようになったんですよ。だから……』
「だから何だってんだ」
今まで静かに聞いていた中也さんが口を開く。
少し声のトーンが下がっていて、怒っているのが分かる。
こんなに怒ってる中也さん、一回か二回しか見たことない。
『だ、だからその……心配しないで、って…』
「……心配すんなって思ってんなら、何で泣いてんだよ」
中也さんが、いつの間にか頬を伝っていた涙を指で優しく拭ってくれる。
怒ってる筈なのに、こんなに優しくするから…
『だって、じゃないと私っ……中也さんに甘えちゃ、』
「甘えればいいじゃねぇか!それに、何で俺がそれを聞いて軽蔑すんだよ!?太宰の奴が居なくなって、それに関して俺に言い出せなかったのは俺のせいみたいなもんだろっ…クソッ、」
違う、中也さんのせいなんかじゃないよ。
『違うの、私が勝手に捕まっただけで』
「お前は何も悪いことなんかしてねぇよ……俺がお前に気遣わせて…一緒に居てやれなくて、ごめんっ、」
今度は力強く抱きしめられる。
「太宰や赤羽から聞いた、俺に会いに行けなかったのは、俺に忘れられてたら嫌だからって…安心しろ、俺はぜってぇ忘れねぇから……今度何かあった時は、絶対に助けに行くから…っ」
中也さんの温もりが暖かい。