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第2章 暗闇の中で


名前を出されなくたって、私の能力の対策をとれる人物なんて地球上でただ一人、その名の人物しか存在しない。

何故ならば…

「覚えているだろう?…そう、ポートマフィアで保護される以前に、君が捕らわれていた“実験者”だよ」

『ゃ、ぁ…なん…で……』

「破格の金を用意されてね?……近頃ご傷心だった様子だし、君の能力も把握済み。更にはポートマフィアに気付かれずに遂行したかったそんな時、あれだけ中原中也にご執心だった君が、彼から離れてポートマフィアまで撒いて出てきてくれた!」

『ぁあ…あああ……っ』

何でああしたんだろうと、後悔ばかりが募ってくる。

何で仕事に疲れてる中也さんの目を盗んでこっそり出てきちゃったんだろう。
何で中也さんと一緒に外に行かなかったんだろう。

……何で、おはようもさよならも言えずに、こんなところでバイバイなんだろう。


中也さんの名前を出さないで。
それまでずっと太宰さん達の事ばかり考えてきたからか、ようやく我にかえった頭は中也さんでいっぱいになる。
遂には堪えていた涙までもがボロボロとこぼれ落ちるものの、男は笑って見てるだけ。

中也さんと話してても満たされないだなんて思った自分に罰が当たったんだ。

そんな事ばかりを考えていたが、結局思い出したのは初めて中也さんと出会った日。
私が……白石 蝶が生まれた日。

あの場所から救い出してくれた、私に生を与えてくれた中也さんの事が鮮明に脳裏を過ぎる。

男は、もう抵抗しないだろうとみたのか、絶望する私を他所に何処か別の場所へと行ってしまった。




そう、あの場所……あの実験施設から中也さんが救ってくれて、折角自由になれたのに。
折角一人の人間として生きる道が与えられて、折角一人の女の子になれたのに。












私はまた、戻って来たのだ。

再び始まる水槽漬けの睡眠時間を過ごす日々に。
あの電流…それどころか、もっともっと恐ろしいものがいっぱい試されるあの男の元に。

何度も抜け出そうとした。
喉が枯れそうになるまで中也さんの名前を叫んだ事なんて何回もあった。

けれどもあの男は、電流でそれを抑制する。







実験の日々を終える事が出来たのは、それから三年半後の事。
突如、施設が誰かによって破壊され、全システムがダウンした。
それを見計らって私はそこから脱出した
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