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第8章 空白の時間


『だ、からっ……どこ指差して………』

「あ?……!わ、悪いっ!!」

立原は慌ててすぐに私の服を直し、顔を真っ赤にさせて背けた。
不思議だ、さっき触られた時は立原相手にどうしようもないくらいに怖がってたのに、立原だってようやく身体が認識してくれたのか、今度は安心しすぎてまた泣き始めてしまう。

『あ、れッ?何で…おかしいなぁ、っ……ねえ立原、おかしいよ私…最近泣いてばっかりで、涙腺までおかしくなっちゃった……っ』

「!…お前はなんもおかしくなんかねえよ、無理矢理されて怖がんのなんか当たり前だろ」

『そっちじゃなくてね…?安心しす、ぎて…っ、この感じが、久しぶりで……』

立原はその瞬間私に背を向けて、私にそこに乗るよう促す。

『で、でもどこに連れてくの?私、まだそっちに戻っちゃいけなくって』

「いいから乗れ!!…ッ、お前が無茶してんのは分かってんだよ、んな事せずにいれるだけこっちにいればいいものを!なんでそこまで我慢してんのに甘えねえんだ!?」

珍しく立原の怒ったような声が聞こえてビクリとなり、恐る恐る立原の肩に触れた。

『……暗くなったら、またバイバイするから…ちょっとだけ、だよ』

「そういうところ、お前の悪いとこだぞ…幹部は今出てこれっか分かんねえけど、行くだけ行ってみればいい。会うくらいのこと、我慢する必要なんかねえだろ」

『う、んッ…うん……っ』

立原の背中に乗って顔を埋めて、グス、と泣きつく。
まだ戻っちゃダメだって決めてたのに、会っちゃダメだって、言い聞かせてたのに…

「ったくよ…いいから、後は大人に任せとけって」

『子供扱いしないでよ…立原のくせに』

「分かった分かった、んじゃ後はお前の大好きな強い人に任しとけ」

『………その言い方ずるい』

お前に勝つならこれしかねえからな、と言う立原はどこか機嫌が良さそうになった。
しかしすぐにそれも終わって、また立原の雰囲気が暗くなる。

「…頼む、もう無茶しないでくれ……俺までどうにかなっちまいそうだ」

『……して、ないよ。ちゃんと生きてる』

「…何があったかはまだ聞かねえが、ちゃんと幹部には会ってこい。お前も勿論そうだったろうが……あの人今日、すっげぇ弱ってっと思うから」

ポートマフィアの拠点に並べられていた死体袋を思い出す。

『そう…もう、私がいないとダメだなぁ……』
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