第8章 空白の時間
歳は二十四、五歳くらいだろうか。
中也さんよりも少し年齢が上になりそうな人達だ。
『えっ、と…これは?』
ジリジリと五人の男の人に壁の方に追いつめられて、背中がトン、と壁に当たって肩がビクつく。
出来るだけ穏便に済まさなきゃ。
下手に攻撃したり、能力で抜け出して大きな騒ぎにでもしちゃったら、最悪武装探偵社の看板に泥を塗ってしまう。
それか……下手な話の出回り方をして、私が地上に降りてきている事がバレてしまう。
「これはって、見てわかんない?いい事しようと思ってんだよ」
『いい事って…ッ、やめっ……きゃッ…』
「なに抵抗とかしてくれちゃってんの?可愛いねぇ…」
掴まれていた肩を振りほどくと両腕を左右から掴まれて、壁に押し付けられる。
ググ、と力強く、痛いくらいに押さえつけられて顔を歪めた。
『離、して…!?やめて、それに触らないで!!』
最初冷静さを保ってどうこの場をおさめようか考えていた頭も、相手にそれを触られると同時に焦り始める。
「ん?この指輪か?何だよ、誰かからのプレゼントか何か…まさか、君の男?」
『そんなんじゃなッ…ひゃ、っ』
頬に手を当てられて、相手の指が耳や首筋に当たってつい声を漏らしてしまえば、男の人達は一瞬キョト、とした。
そして何を思ったのか、すぐにツツ、と指で首筋を撫で下ろされる。
『ぁ…ッ、やぁっ……あッ』
「…こりゃあいい、感度までいいときた。まさか首に触れるだけでそんな反応する奴がいるとまでは思ってなかったが」
スッと手を離されて、与えられた刺激に肩を不規則に跳ねさせていると、羽織っていたボレロに手をかけられる。
『や、ッ…何して…』
「何って、だからいい事だよいい事。大丈夫、すぐに良くなっから」
男の発言によって、これからどうしようと思っているのかを嫌でも感じ取ってしまって、身体が震え始めた。
嫌になるくらいに身体に刻みつけられた恐怖が、嫌な想像が、私の脳内に溢れ出す。
『や、だっ……やめて下さッ…』
「あーあー、泣いちゃったよ。どうすんだよこの子、どう見たって怖がってんじゃねーか」
「折角可愛いのにさー?どうせならもうちょっといい顔してほしいし」
「お前らどっちの味方だよ…ったく」
何人かの声が聞こえたかと思えば、目の前の男が私の鎖骨を指でなぞり始めた。